Comments by Dr Marks

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アイルランドの田舎医者

 第6章 緑の四十の色合い

バリーは、おとなしく助手席に座っていた。彼もオライリーもベルファストからのドライヴ中は押し黙っていた。ジーニー・ケネディーの検査をオライリーが何ゆえ中断したかについてのちょっとした議論のせいである。 しかも、いまいましいことに、オライリーの…

 第5章 ゆっくり急げ

バリーは、ケネディー氏とオライリー先生に付き従って農場内の母屋に向かった。白壁でワラぶき屋根の平屋だが、コケが生えてるところをみると何年もふき替えてはいないだろう。煙突から煙が立ち昇っている。燃えるピートの強い臭いがした。どの窓にも黒い雨…

 第4章 馬耳東風

バリーは、昼食の自分の皿を押しのけると、食堂のイスに寛いでいた。確かに、オライリーの診療の仕方には改良の余地があると思う。しかし彼は、静かにゲップをしながら考えた。ミセス・キンケードのご馳走がこのまま続く限りは、オライリーの一風変わった振…

 第3章 新しい朝が来た

バリーは、自分の目覚ましがジリジリ鳴る音で目覚めた。宛がわれた屋根裏部屋は、ベッド、ベッド脇の小机、洋服ダンスでちょうど満杯になっている。昨夜、荷物をほどき、彼のわずかばかりの衣類をしまい、屋根窓に近い隅に釣竿を立て掛けた。 起き上がって、…

 第2章 人間、いとも簡単に空を飛ぶ

F・F・オライリー医師(内科医学士、外科医学士、産科医学士)〔訳注一〕 診療科目:内科および外科 診療時間:月〜金、午前九時〜正午 バリーは、三階建ての家の壁に打ち付けられている、緑に塗られた玄関扉の脇の真鋳の板に書かれた三行の案内を読んだ。時…

 第1章 ここからではあそこまで行けない

バリー・ラヴァティー、つまり、インターンの年季が明けたばかりで学位記のインクも乾ききらない、新米のバリー・ラヴァティー医師は、道端に自分のおんぼろのフォルクスワーゲン・ビートルを停車して、助手席の上に広げた地図を調べた。シックス・ロード・…