Comments by Dr Marks

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とうとうメリーHが引退、しかしゲヴィッチ料理は不滅!

メリーHが仕事を辞めた。今までも半分引退(semi-retired)なのだから引退していたには違いないのだが、今後一切働かないそうだ。ナチスの刺青付きの旦那さんと一緒に故郷ヨーロッパ(彼女はルーマニアン・ジュー、彼氏はハンガリアン・ジュー)の旅行などで過ごすそうだ。子供のいない彼らは(私らが子供みたいなものだが)そのようにして老後を楽しめばいい。

カリフォルニア州知事の俳優シュワちゃん(シュワルツネッガー)は20ドル札1枚でアメリカに来てハリウッドで成功した上、実業界でも成功したが、その前に名門ウィスコンシン大学も卒業した頑張り屋だ。アメリカに来たのは1968年らしい。当時の20ドルは結構なものであった。彼よりも4年前に移民したメリーH夫妻は伝を頼ってL.A.のホテルに就職した。

ハンガリアン・ジューの旦那はインテリで育ちがよく、内気で不器用だった。しかし、取り合えずということで初めの日はウエイターになって客に食物をサーヴしていた。すると、緊張のあまり、あろうことか着飾ったお客様の膝の上に料理した芋の塊を落としてしまった。それでも気を取り直して一生懸命料理を配っていたら、ある紳士が彼を手招きしたそうだ。

何か料理を所望するのだろうと思って注文を聞くと、「君、このテーブルには何もサーヴしてくれるな」と申し渡した上、ウィンクして、「そうしてくれたら感謝だよ」と手に20ドル紙幣を握らしてくれたそうだ。この頃(60年代前半)までは、まだヨーロッパからの新参者に先に来た人々は優しかった。きつい冗談を言いながらも、その時は無一文だった彼らへの大きなプレゼントとなった。(この頃の結構いいアパートが月40ドルくらいだった。)

彼はウエイターは不向きと判断されて、翌日から事務室に閉じ込められホテルの会計係となった。以来、数十年、ホテルの会計一筋で勤め上げた。今では世界中にネットワークのあるホテルだから、永年勤続者のベネフィットで世界中の同ホテルの系列なら超格安で泊まれるらしい。(私も同ホテルの会員だが、彼らの割引というのは会員割引などとは全く別でほとんど只ということらしい。要するにチップだけ用意していればいい。)

年上の彼はとうに引退していたが、メリーHは2009年になった先日引退したそうだ。しかし、我が家に来るゲヴィッチ料理は不滅だ。今日も来た。しかし、今日は少し造反してカレー粉を入れてみた。特別の味がしておいしかった。小さな新ジャガ芋もうまかった。引退してもゲヴィッチ料理が続くのは本当は感謝しなければならない。もう飽きたなどと言っていたら罰が当たるな。

ところでゲヴィッチ料理だが、どう書くかというので紹介する。いろいろな綴りがありそうだが、ghiveciと書く。ゲヴィッチあるいはギーヴィッチと発音するが、メリーHおばさんはゲヴィッチと発音している。英語的にはギーヴィッチかもしれないが、メリーHは今でもレストランをレスタウラントと発音するくらいだからわからん。ところでなお、メリーHのHとはたくさんいるメリーを区別するためで、旦那の姓ハーシュコヴィッツの頭文字。