Comments by Dr Marks

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Noname or 早乙女清次 様、コメントありがとうございます

コメント欄の占拠などとおっしゃいますな。私自身、主はそっち抜けでしばしば訪問者同士でやりあいます。どうぞ、ご自由に発言してください。そのためのブログです。また、情報リテラシー教育の専門家ということですから、早乙女様が実名だと信じております。(なお、情報の専門家として小谷野氏が偽物であるという根拠はあるのでしょうか。私は本物の小谷野敦氏と信じております。)

小谷野先生、皆様、いったん別のコンピュータから覗いてはいましたが、予告どおり、この30時間ほどは参加する余裕がなく失礼いたしました。コメントにはコメント欄でいわゆる「レス」をするのが筋かもしれませんが、勝手に主の特権で記事欄を使わせていただきます。

早乙女様、

>「匿名」が問題なのではなく、中身のない「罵詈雑言」が問題なのかと思われますが

いいえ、両方を問題にしたつもりです。ただし、「匿名」と「罵詈雑言」は、それぞれ別個に取り扱われるのではなく、双方の動的な関係でみる必要はあるでしょう。匿名そのものが問題ではないように、罵詈雑言そのものさえ問題ではありません。

私などは、不徳のいたすところか、生まれてこの方、罵詈雑言の海を渡ってきたようなものです。たった今も「チープな欲望の表現」などと早乙女様に言われたばかりです。古代ギリシアの ostoracom なら、一方的な罵詈雑言であっても一定以上に溜まると国外追放ですから大変だったでしょうが。罵詈雑言など意外と気にならないものです。無神経な自分であるからなのかもしれませんが、実際、罵詈雑言であればあるほど気にはならないのです。その理由は、低級であればあるほど、相手にするレベルではなくなってくるからです。

匿名もそうでしょう。匿名同士がネットで語り合ってお互いの為になったり、喜び合ったり慰め合ったりするのであれば、何の問題もありません。逆に、もし匿名同士でいがみ合ったり憎みあったり毒舌の応酬をしているとすれば、それは何でしょう。この者たちは、せっかくの人生の時を無駄に過ごしている馬鹿者ども(失礼)に過ぎないではありませんか。

以上は一般論です。さて、「日本のブログでは専門家が専門の議論を匿名で行っている」という私自身の culture shock の体験について述べます。このことは、小谷野氏とO君との問題に繋がってきます。(小谷野氏の話がそのとおりであるかどうかはわかりませんが、O君という方が実在し、両者の間で問題があったことはネットサーチですぐにわかりました。)

そもそも、専門家の運営するブログというものは、アメリカに多い実名であろうと日本に多い匿名(仮名、ハンドル名)であろうと、普通は非専門家にも参加の機会を与えているものです。その際、アメリカにおいてですが、非専門家が専門の問題について匿名でコメントすることがもちろんあります。私も、誰でも(たとえ匿名でも)コメントを投稿できるようにしています。しかし、専門家は実名でコメントするし、ブログも実名で運営するのが一般的です。

ところが、<専門家が自分の領域において匿名で発言する場合>は深刻な問題があります。<一方的発言>になり、反論の機会を与えないこと、また、多くの場合、匿名でありながらその道の専門家であることを匂わせますから、<一方的権威の誇示>となります。勢い、非専門家に対して(時には専門家に対しても)misleading な情報を垂れ流す形となります。ああ、そうなのか、彼が(あるいは彼女が)そういうのだから、そんなこともあるんだろうなー、というふうに。

ふつう専門家が実名で運営するブログには、コメント欄のほかにEメールなどの連絡先があり、公開でコメントするほどには熟していない議論や私信のほうがよい連絡のために使われます。当然、メールを送る側は、自分の名前もブロッガーに知らせることになりますが、公開するほどのことでなければそうするべきです。ただし、公開することによって、ブロッガーとコメンテイターの秘密の議論ではなく、他の専門家や非専門家をも議論に招き入れる意図があれば公開コメントとなりますが、専門家はふつう実名を名乗って発言します。

O君の実例ではこのあたりがどうであったのか、私にはわかりません。しかし、専門家同士が同一の専門の主題について議論する場合は、非専門家が入りにくい議論の形態があり、特別の arena があります。早乙女様の専門分野においてもこのことは同様でしょう。私は実に民主的なネットのせいでO君が誰なのかわかりました。小谷野氏の教室の後輩であるばかりでなく、研究課題も重複する peer すなわち同業者です。捨て台詞的な批判ではなく、せめて多くの同業者の中で議論する学会場での礼儀と英智をもって議論すべきでしょう。それこそ、この伝統的な正々堂々がお嫌いですか。

ネットなら何を言っても恥ずかしさを感じず、かつ匿名でいいというのは解せません。また、早乙女様がおっしゃるような<匿名でも議論の質が高ければいい>というのも信じられません。社交的談話の質が高い低いのレベルならわかりますが、小谷野氏とO君の議論がはたして匿名のまま質を維持できるものなのか、「情報リテラシー教育の専門家」としてのお考えをお聞かせ願いたいと思っています。

以上、書きなぐりになりましたが、趣旨はおわかりいただけたと思います。これに対するご意見をお聞かせいただけたら幸甚です。後少しで当方は深夜になりますので、明朝このページを開けます。(どなたでもどうぞ。)