Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

食生活の伝統はしぶといが、言葉の継承は難しい

感謝祭は決心してKFC(ケンタッキーフライドチキン)にしたが、実はメリーHからまたユダヤルーマニア料理をもらっており後日食べた。また、ミス・キャロル(といっても93歳!)をコスコ(日本ではコストコというらしいがCostco)に買い物に連れて行ったのでいろんな食べ物をもらった。どちらも罰当たりユダヤ人なのに、4/4(祖父母4人がユダヤ人ということ)の純粋ユダヤ人なので食生活は伝統から離れない。鶏肉など何でもよさそうなのにコスコでかならずコーシャ(kosher)のものを買う。

こんなことを書くのは、今日、年配の日系3世という人からハリハリ漬けのようなものをもらったからだ。立派な日本人の漬物だ。3世といえばとうに日本語は失っていることが多い。この人もそうだ。しかし、日本で暮らしたこともないのに、正月が近づくとこの漬物をするということだ。祖母から引き継いだものだ。それでも、日本語は引き継ぐことができなかったらしい。

せいぜい2世くらいまで何とかならないかと思うが、日系人はあまり日本語の継承に熱心でないような気がする。ボストンで会った22の古代言語を征服したというヤマウチ先生も2世なのに日本語は挨拶だけだった。親が日本語を使える私の親類の子供たちもほとんどが駄目だ。やはり、何らかの形で読み書きを習わないと、子供のときに日本語を話していてもすぐに失ってしまう。

日本語は日本で使っているからまだいい。ユダヤ人のイーディッシュは確実に使う人が減少している言語だ。イスラエルがヘブル語(ヘブライ語)を国語としたのでなおさらイーディッシュは必要がない。ネバダ州のリノ市に引っ越したラリーなんかは、半年前の電話で「イーディッシュは不滅だ」とか言っておきながら、自分も幾つかのフレーズを知っているだけで話せやしない。

無くなる言語といえば、アメリカインディアンの諸言語もそうだ。残念ながら先年亡くなってしまったのだが、教会で小間使いをしていた酋長とあだ名されるMr. Sittingbull は、遠くを見つめるような仕草をして、こう言ったことがある。「私は子供のとき、毎日祖母とアラパホ(部族の名)の言葉で話していた。自分は学校で英語を習っていたが、祖母は一言も英語を解さなかったからだ。ところが、ところがだ、あの言葉を今思い出そうとしても少しも思い出せないのだ。」これは、当時のアメリカ政府の仕業だね。アラパホ語を流暢に話せるのは、今60歳以上のごく少数になってしまったらしい。インディアン語のジェノサイドだ。