『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』とは

ずいぶんと上手く付けた本のタイトルだね。いや、本当だよ。この町山智浩という著者はカリフォルニアでも超リベラルというかキチガイな地域であるサンフランシスコ・オークランド地域に住んでいるらしい。しかし、本人は特別そういう人ということでもなさそうだ。ブログを少し覗いてみたが映画案内が主だ。彼の著作は一つも見たことがないが（ていうか、猫猫先生以外、日本の近頃の著作は何も知らない）、最近、上の標題の本が売れているらしい。

もう一度言う。本当だ。私は１年間世界の人文地理を教えたことがある。（Dr. Marks は何でも教えるのだよ。高校で数学を教えたこともある。）受講者の８割はアメリカ生まれのアメリカ育ちだったと思うが、アメリカ人なんてそんなものだ。私の経験でなくてもわかる。NBCテレビでJay Leno という元コメディアンが持つ深夜番組があって、そこにJay Walkという街頭インタヴューをするコーナーがあるが、そこに登場する一般のアメリカ人はみな馬鹿ということになっている。実際、最近もアラスカ州はと聞いたら、アメリカ地図の東部を指し示したアホもいた。

しかし、Jay Leno の番組の場合は、ヤラセとは言わないが、編集の手が入っており、面白い場面だけを放映しているのであって、あれが一般的と思ってはならないだろう。まさか、町山さん、あの手のテレビ番組に毒されたのではないでしょうね。

それでも、私は今、アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らないということは本当だ、と言った。しつこいが、そのとおり。しかし、これには訳がある。この訳を考慮しないと、アメリカ人の半分は馬鹿になってしまう。説明しよう。

まず、「日本人で東京を知らないのが半分いる」というレベルで考えてはならない。日本人にとっての東京の位置は、地図を見てもわかるように非常に明瞭な特徴がある。東京湾があり、房総半島があり、本州を逆さ「く」の字にした真ん中にあるのだ。実に簡単に場所を特定できる。

逆にニューヨークを見てもらおう。かなり大きな地図でロングアイランド島が特定できなければ、小さな北米白地図の上で正確にニューヨークの位置を指し示すのは、普通は困難だ。東海岸のどの辺りなのか、かなりの常識人でも迷う。まあ、これはニューヨーク州ニューヨーク市（New York, NY）の場合だ。

しかし、50州の線引きをした白地図でニューヨーク州はどこかと問えば、馬鹿なアメリカ人でも正答率は高くなる。オンタリオ湖とカナダ国境にある州で尻尾がわずかに大西洋に接している州を探せばいいのだ。（その尻尾がニューヨーク市。）アメリカ人のほとんどは、ニューヨーク州がニューヨーク市を起点にして五大湖の一部やカナダ国境に接するほど北に伸びており、東部13州の中でも大きい州であることを知っている。逆に、私は、このことを知らない日本の知識人にしばしば遭遇する。（ナイアガラ観光でもした日本人なら知ってるだろうが。）