Comments by Dr Marks

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フェアな研究者の鑑、ゲルト・タイセン―マルコ伝成立は70年以前か以後か

トドさんが言っていたタイセンの『新約聖書』(ドイツ語版)をソファーに寝転んだときに開いてマルコ伝の部分をふと見た(6-1、S64)。この本はとても小さな本で可愛い装丁が好きだ。そういえば日本に捨ててきた(置いてきた)『わが青春のマリアンヌ』ドイツ語版も忘れがたい装丁だった。モーアズィーベックの学術書の装丁もいい。ドイツではないが、そういえば『フッサール全集』(ドイツ語版)の昔の装丁はよかった。第一巻を買ったときは(とくに高かったので)嬉しくて抱いて寝たほどだ。

閑話休題。ふと見ると、タイセン自身は70年以後説だが、私が常日頃言っていることも書いていた。すなわち、エルサレム神殿の「土台(Tempelplattform)」は残ったと明記している。そして、彼自身とは違う考えの聖書学者もかなりの数に上ると公平に記述している(Manche Exegeten meinen trozdem, Mk schreibe kurz vor 70 n. Chr. しかしながら、少なからぬ聖書学者は、マルコが紀元70年の少し前に書いたと考えている)。

グッドエイカーはパウロの手紙を年代指標として複雑な計算をしていたが、私はエルサレムユダヤ人のペラ逃避が70年以前から始まっていることも、イエスあるいはマルコ(あるいは双方)の予告が実際の神殿崩壊以前であるとのヒントになりそうだと思っている。もっとも、70年以前にペラ逃避があったのはガリラヤの弟子たちが主役だと考える学者もいるだろう。(←タイセン風!)

そういえば、タイセンはプロテスタントだが、愛読する聖スルピス会の故レイモンド・ブラウン師の著作はいつもフェアだな。そうそう、マシア師と同じイエズス会士であるジョン・マイヤー兄いの著作もフェアだぞ。もっともフェアに書けるというのは学識が深いということだろう。