Comments by Dr Marks

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骨董品もそうかもしれないが考古学は絶対に氏素性が大事なこと(専門用語 unprovenanced に触発されて)

Unprovenanced(アンプロヴィナンスト)という言葉は手持ちの英和辞典にはなかったし、英英辞典でも稀な言葉だが、考古学や博物学でこれを知らないのはもぐりだろう。私は歴史学は多少勉強したものの考古学は訓練を受けていないので他人の研究結果を利用させてもらう口だが、この言葉には敏感になる。

この言葉や un が取れた肯定の provenanced に馴染みがなくても、provenance なら古典文学その他の学問に登場するので意味は容易に想像できる。Provenance は手元の辞書では「起源、出所、由来」となっていた。下世話的に言えば「氏素性」または「来歴」であろう。このことは骨董品でもそうだが、考古学的発見においてはなおさら重要である。これがはっきりしないと後々まで<学問的にも>論争の種になってしまう。氏素性とは、「いつどこで発見されたのか」に集約される。これさえ確実であれば、その先はかなり究明できる。

いや、普通の考古学的発見なら問題はない。いわゆる考古学者(社会的にクレデンシャル=学位等のある学者)が指揮して発掘したものならあまり(それでもゼロではないから)問題はない。問題になる多くのものは、実は<骨董屋>の持込や骨董店・がらくた市場で偶然に見つかったというものだ。もちろんそのようなものではあっても、後に氏素性が確認されたナグ・ハマディ文書や死海文書は問題がないが、「イエスの兄弟ヤコブの骨壷」は2002年以来「事件」となってしまったなあ。