No. 6.
「共観福音書問題」(こぼれ話)Q資料仮説否定論者でオックスフォードの教授になれなかった二人となれそうもない一人について拡大つぶやき版
A.M.ファーラー(Austin Marsden Farrer, 1904 – 29 December 1968) は、普通、著作でフルネームは使わず A.M. Farrer としているだけだ。マイケル・グールダー(Michael Douglas Goulder, 31 May 1927 – 6 January 2010)もフルネームでなく Michael Goulder だけ。
これら二人はオックスフォードの教授にはなれなかった。ファーラーはいいところまで行ったのだが、結局、うんと年の若いヘンリー・チャドウィックに教授職をさらわれた。この人たちは何もQ資料仮説否定のせいでオックスフォードの教授になれなかったのではない。
例えば、ファーラーの対抗馬チャドウィックのほうがケンブリッジの教授を兼任するなど、若くてスケールが大きかったのかもしれない。もっとも、チャドウィックは一族が有力者でもある。ファーラーは実際にオックスフォードの教員であったが、今年初頭に亡くなったグールダーはオックスフォードの教員であったこともない。
ファーラーも面白い生涯だがグールダーはもっと面白いことをすでに書いたので繰り返さない。そういえば、グールダー大先生と比べるのはおこがましいが、余と共通していることはある。初めから聖書学や神学に興味を持っていたわけではないということだ。ケンブリッジで古典学を学んでから世俗社会で働いたあと、神学の学歴なしにオックスフォードのファーラーの許で学んだ。古典学をやって語学に向いているということもあるのだろうが、新約学だけでなく旧約学にも詳しい。(両方というのは珍しいことではないが、一般的ではない。)
なれなかったではなく、なれそうにないのは我らがホープであるマーク・グッドエイカーだ (Mark Goodacre) 。彼はあまり経歴を明らかにしていないので知ってることもあるが知らないふりして公表データで書く。年齢はアラフォー。若い。(影の声:正確には44歳。)オックスフォードではM.A.の後いきなり博士課程ではなく中間学位の M.Phil. を取らされているからエリートコースとは言えない。(しかし、我らは彼をエリートと思っている。)
三人の中でグッドエイカー先生だけが出自はそれほどよくないことが(なんとなく)わかる。顔見ればそうだし(顔で判断できる)、ファーラーはセントポールズ、グールダーはイートンの出だが、グッドエイカーは違う。貧乏だったからローマに行ったのは昨年が初めてだし、イスラエルに行ったのも今年が初めてだ。スコッチではなくビールが大好き。しかし、アメリカに来て5年なのにアメリカ国籍を取るつもりはないらしい。(わが師はすぐに国籍を取った。)イギリスに帰るつもりでいるが、帰れたとしてもオックスフォードは無理だろう。