Comments by Dr Marks

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「トマスによる子供期の福音書(Infancy Gospel of Thomas)」をめぐって二つのこと:クロッサンによる脅し屋デニス(Dennis the Menace)との比較と、嗚呼、懐かしの我が師、ショーラー先生

「トマスによる子供期の福音書」という外典がある。子供期というのはイエスの子供期のことで、5歳とか8歳の頃のさまざまな「いたずら」とも解釈される身の毛のよだつような仕業を行っている記事が載っている。子供期のイエス伝(福音書)というわけである。もちろん史的な話などではなく、作り話であろう。

このような子供のイエスの薄気味悪さを、クロッサン(J. D. Crossan)は子供アニメの主人公「脅し屋デニス」のデニスのようだと、ある昔のテレビ番組で語った。すると、その発言の「脅し屋デニス」とは、どの「脅し屋デニス」であろうかと、疑問を持った聖書学者がいた。例のグッドエイカー先生だ。彼によると、「脅し屋デニス」は英国版と米国版があり、見かけは全く違う。さて、どちらであろうかというのだ。(グッドエイカー先生のブログ参照:http://bit.ly/9QjkS1

しかし、聖書歴史学でもあるまいし、どちらなのかはクロッサンに聞いてみればわかるようなことを、いろいろと議論してみるところが学者の「遊び」。まあ、わざわざメールや電話で聞くようなことではないから学会の折にでもと思うかもしれないが、クロッサン大先生はもう学会に来なくなったからなー。こんなふうにして遊ぶしかないのだろう。

このブログの少し前の日に、グッドエイカー先生は「トマスによる子供期の福音書」のYouTubeをいくつか紹介している。その中の一つが以下のものだ。見て驚いた。我が懐かしのショーラー(David Scholer)先生も出ている。何人か出ている中でクロッサン以外に背広姿で水色のシャツを着て話しているのがショーラー先生だ。録画の場所もわかった。フラー神学大学院の「祈りの庭」の中のベンチに座って話している。ショーラー先生は一昨年帰天された。余の副専攻である新約学の指導教師だった。

ついでに、この外典ウィキペディアも紹介しておく。内容の説明もあるが、残念ながら日本語版はない。(http://en.wikipedia.org/wiki/Infancy_Gospel_of_Thomas