ユダヤの貧乏人村は寂れていた。東欧のシュテットル時代と変わらないな。時計の電池を取替えに行って。
3年前に東京駅八重洲口で店をはっていた大道商人を脅して格安で買ったまあまあの時計の電池が約束どおり3年で電池切れになった。脅した顛末は一度何かに書いた気がするが、簡単に言えば脅したのではなく、余が勘違いして少ない金額を渡してしまったのだ。すると彼は、平気でショートの金を渡す余の様子がヤクザのように見えたのか、金額の誤りを指摘した群がるお客のブーイングにもかかわらず、残りは貰えないと固辞してしまったのだ。
この時計は詳細を言わないことにするが、割といいものだ。3年経っても悪いところもないし、もちろんはげたりすることもない。電池が切れると本物の紳士時計 10 Bar 防水だから(ダイバー用なら20 Bar)交換のために裏蓋を開けるのが面倒。道具がなければ絶対に開かない。道具は高いから結局プロの時計屋で入れ替えてもらうことになる。
そんなときにロスアンジェルスはとても便利な街がある。余の街に接してはいるが余の街よりも(通りよりも)もっとビンボビンボした街に行けば、時計屋がずらりと並んでいる。時計屋とはいうが本当は宝石店でもあるし高級万年筆とかも扱い、売るだけではなく買いもするので質屋のようでもある。もちろんここはユダヤ人街で東欧からの移民だから正統派の街でもある。
帰りについでだから Glatt Kosher(グラットはイーディッシュで完璧な肺のこと。そこからグラット・コーシャで完全なコーシャの意)で果物を買い(安いんだ)、1年ほど前に余の街からこの街に移転した本屋でMordechai Ben David の CD を買った。賢い人が彼の名を聞くと眉をひそめるだろうが、余は30前から(彼の名も知らないうちから)彼の歌を口ずさんでいたので、いつまでも懐かしいのだ。
写真は、そういった Glatt Kosher の店だが、堂々とコーシャの寿司と垂れ幕があるので入ってみたが、あまり美味しそうではないので買わなかった。熱心な店員がカタログを渡してくれた。ちょっとかわいそうだったな。今度は買ってやるか。ああ、そうそう。電池の取替え代金は5ドル。チップも5ドルにして10ドル渡そうかとも思ったが、おかしいので2ドルにして7ドル渡した。それでも喜んでくれた。