Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

 「ポルノ」という言葉は新約聖書にあるんだよ


娼婦・遊女を表わす言葉は日本語でも英語でもたくさんある。どうも、この職業ないしは身分を言い表す際に、なるべく婉曲に表現しようとしたり、同じ娼婦でも微妙な役割分担を言い表そうとして単語が増えるのであろう。更には、直接的な単語で言い表さず、「身持ちの悪い女」などと説明的に言うこともある。

また、どこで商売するかによっても呼び名は変わる。神殿で商売するから神殿娼婦などというのは直接的で面白みはないが、野外のというか道端・辻に立って商売する下等な娼婦でも、日本語の夜鷹という呼び名だと英語のstreet girl、あるいは street walkerよりは遥かに趣がある。

しかしまあ、英語の単語も豊かだな。Whore, prostitute, harlot, courtesan, quean, bawd, trollop, slattern, strumpet, call girl, brothel worker 等々だ。まあ、この中では courtesan が高級娼婦となるのだろうが、他は夜鷹と変わりはない。聖書の中でパウロヤコブ黙示録のヨハネが使ったポルネー(πόρνη)という単語は、この夜鷹なそうだ。そうさ、ポルノの語源だよ。

何でいきなりこんなことを書いたかというと、今日、How Typical a Roman Prostitute Is Revelation’s “Great Whore”? なんていう論文が届いたからなんだ。著者は Jennifer A. Glancy and Stephen D. Moore。Journal of Biblical Literature 130(3): 551-569 (Fall 2011) 所収。

写真は、ストラスブール市内の「小さなフランス(Petite France)」と言われる区域。まあ、ロマンチックな、などと思ってはならない。この浮島の区域はフランス病(性病、梅毒)に罹患した者を隔離していた場所だ。昔の隔離棟の一部が今は(「も」かな?)男子の公衆便所だったりするから笑ってしまう。

隔離というと怖いが面倒もみたんだろうね。そうそう、この写真の右側の白い建物は、現在、事情のある母子援助のために使われている。