Comments by Dr Marks

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「ある」と「とある」は同じ用法でいいものだろうか


近頃、本来は「ある」であるはずのところに「とある」と表現する者の多いことに気づいた。日本語使いの我が身内の若者も使った。

確かに、辞書によっては同じであると説明しているものもあったが、区別しているもののほうが多い。「ある」は何の説明もなしにいきなり使えるが、「とある」というのは、あらかじめの何らかの状況に付加的に与えられるものであり、いきなり「とある」と使うものではないだろう。

つまり、「ある」であれば、冒頭に「あるところに」とか「ある時」あるいは「ある人がいて」などのように使えるが、「とある」は偶々で予期しない場所や時や人物などに使うのではないのだろうか。

英語で言えば、具体的にわかっていてもわからなくても 「a certain 何々」というのが「ある」だが、「とある」は偶然に遭遇する何かであるから「an accidental何々」あるいは「an unexpected何々」であろうし、実は偶々だからどうでもいい「an incidental何々」だったり「a nonessential何々」だったりするはずだ。

前者には決定性があるが、後者に決定性はない。こんなことを言うと、誰か何か言ってくるだろうな。

写真はパリ行きの列車にカールスルーエから乗り合わせた少年。英独仏の三カ国語を自由にしゃべっていた。ストラスブールで余が下車しようとしたら、余もパリまで行くと思っていたらしく、驚いて「えっ、ここで降りるの」とドイツ語で聞いてきた。