Comments by Dr Marks

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内田氏の次の記事「たくさんの人と出会って」 (http://blog.tatsuru.com/2007/10/12_1930.php)に対するDr. Marks からの親切コメント

「卒論中間発表です」の後の記事に、中真央という人から自分が出ている<研究論文>の抜き刷りを貰ったと書いていて、「[内田が]どんなことをした人間だと思われているかについては、実際に原文に就かれたい」などと書いているが、どうやってそんな文献見つけ出すか何も書いていない。しかもフランス語だぜ。はい、教えますここをクリックオンするとオンラインで見られる。フランス語なので面倒な人のために簡単な紹介をします。

雑誌の名前は Cahiers d’Etudes Lévinassiennes という年報です。イスラエルとフランスからの同時出版ということになっています。掲載されているのは第4号(2005年号)。題は Dans une culture sans Dieu: Lévinas au Japon [神なき文化の中で:日本におけるレヴィナス] となっています。

著者は村上靖彦と中真央。Panorama という分類の著作ですので、正確に言えば、研究論文というよりは研究動向報告でしょう。ざっと目を通しただけですが、この村上靖彦博士は若いのに、なかなかのフランス語の書き手であることがわかります。内田氏は3種の話題で登場します。

まず、ユダヤキリスト教的神のない日本で、西洋的、哲学的視点から研究しているのは、クリスチャンである岩田靖夫(東北大名誉教授)ただ一人であり、ほかは別種の動機からレヴィナスに至っているという前書部分で、内田氏が代表(?)的に引用されている。それは、合田正人との共訳『超越 外傷 神曲』からの一節で、例によって正直な内田氏の告白、「予備知識がなくて何一つ腑に落ちるものはなかった」という箇所です。

次は、合田正人との共訳の大事業で、2005年までの訳業が紹介されています。何しろ、ここ20年のうちにレヴィナスのほとんどの日本語訳があるわけですが、内田氏らの貢献が記述されています。やはり、その意味では功労者ですね。訳者という役回りです。

その他は、ずっと内田氏は登場しないのですが、終りになって、内田氏のフェミニズムに関するレヴィナス解釈と内田氏自身のフェミニズム/反フェミニズムが紹介されます。この部分は、多分(絶対?)、この中真央さんという人が書いた部分です。

筆頭著者の村上靖彦は、1970年生まれ。東大教養学部(フランス文化)卒。ベルギーでしばらく研究の後、フランスで博士号(精神神経科学)。著書あり(Lévinas phénoménologue. Grenoble, J. Millon, 2002)、現在、日本大学三島所属。

お知らせ:下↓の記事は適当に訂正したりしていますので、ときどき内容が変わりますのでご注意。もうこれ以上仕事をサボれないので、コメントがあっても返事はしばらくお待ちください。忙しい、忙しい、……。