Comments by Dr Marks

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なるほど、ドウテイよりはドハティかも―英語をカタカナ表記する難しさ

またまた猫猫ウォッチャーかと言われても、近頃は本家も蔑ろにしているくらいだから、新しいサイトは開拓する時間がない。勢い、ブクマしたサイトしか読むことはないのだ。つまり、今回も小谷野先生のブログからの話題。

大橋先生もよくカタカナ表記の問題を書いているが、英語のような複雑な音韻構造を持つ言語をカタカナで表記するのだから、もともとうまくはいかないものであることは皆さんご承知のうえでのことと思っている。また、今回のドウテイかドハティかは、固有名詞であるので、本人がいったいどう発音するかも問題である。例えば、レーガン大統領の名前は、普通は「リーガン」と発音する苗字だが、本人がレーガンだというので皆がレーガンを呼んでいたわけだ。

その他、正確に発音する場合と、スラッピーに(つまり、蓮っ葉に)発音する場合がある。例えば、私は自分の名前をきちんと「ウォーターマン」と(とくに「ター」の部分です)発音して欲しいし、自分でもそう発音するのに、南カリフォルニアの連中は「ワラマン」と発音してやらないと瞬間わからない奴らが多い。同様な例は、ミッティーがミッディーになるとか、コヨーテはカヨリとなるなどである。

さて、小谷野先生が問題にしていたドウテイだが、もちろん諧謔を好まれる先生は「童貞」を連想して可笑しがったに違いないのだが、Doughty をドウテイと書くのは、先生ご指摘のごとく、本質的な誤りがある。私ならダオティと書くが先生はドハティと書いている。もちろんドハティでもいいと思う。そう呼ばれた Doughty さんは振り向いてくれることは確かだ。しかし、ドウテイと言われても自分のこととは到底思わないであろう。どこが本質的な誤りかって? パン生地の dough と綴りが同じだからといって Doughty の Dough の部分をドウと読んでしまったのが本質的な誤りと言える。

http://www.youtube.com/watch?v=stPOVmBscGc&feature=related

私もついでに一つやっておこう。本家をお読みの方なら、私がよくマーク・グッドエイカー先生と同じ大学にいる Bart D. Ehrman 先生について書いており、カタカナでは「イーアマン」と表記していることをご存知かと思う。近頃のこの先生にも困ったものだが、日本では聖書や神学に縁もゆかりもない素人さんが幾つか訳しているそうで、まあ、それはもっと困ったものだ。売れそうならどうでも訳して出版するのは仕方がないから、それはいいとして、この先生のカタカナ表記は翻訳書で「アーマン」となっているらしい。確かに、普通のアメリカ人は「アーマン」と発音することが多いし、ハングルでの表記を見たら、やはり「アーマン」としているようだ。(カタカナで「アールマン」と書いている人がいたが、これはちょっと外れすぎと思う。)しかし、実は、学者の間では(そして本人も)「イーアマン」あるいは「エーアマン」と表記したほうがより実際の発音に近い。少なくとも「ア」で始めたたならば「アーアマン」のようにもう一つ「ア」を付けないと別人のような気がしてならない。(もう一つ付けないと綴りのRが抜けた名前になってしまうし、実際にそういう名前があるから困る。)しかし、いずれにしてもギヨエテとは俺のことかとゲーテ言いであるから、どうでもいいかもしれない。

そういえば、一頃、今のローマ法王の俗名をラッツィンガーでなく、ラートツィンガーと表記していた日本メディアがあったな。何となくわからなことはないが、本人がラッツィンガーというのだから、ラートツィンガーではないのだよ。そうそう、ロスの殺人者三浦の弁護人 Geragos 君のことは、日本のマスコミは揃って「ゲラゴス」と書くが、私が表記したように「ガラゴス」でないと通じないよ。

追加:アーマンと書いた同じ訳者らしいが、あのマイケル・モーア兄ちゃんをモーアでなく、ムーアと表記しているらしい。近頃の日本人は英語に接する機会が増えて発音がよくなっているはずだが、この訳者は年寄りか?

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日本の古本屋さんへ:ガレージの古い書棚から取り出してベッドサイドに置いた小説類の中に Hemingway の The Old Man and the Sea があった。ハードカヴァーでクロスだが、ジャケットがないし、どうせ廉価本の類と思って軽い気持ちで読み出した。活版印刷で読みやすい。ふと、コピライトページを見ると、ISBNなどはなく、1952とあるではないか! えっ、初版本! 慌ててネット検索すると青のクロス、140ページ、背文字の配列、間違いなくオリジナルのオリジナルだ!!! ただし、惜しむらくはジャケットがない。それ以外は、タイトルページに所有者 Waterman の名前が書かれているだけで、保存状態は完璧。相場は幾らかと思い検索すると、汚れのないジャケット付なら2000ドルから3000ドルだ。日本では、かなり汚れたものが6万円で売っている。さて、汚れなしのジャケットなしなら幾らくらいになるものか。東京で買ってくれる人がいたら持って行きます。幾ら?