Comments by Dr Marks

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The Bucket List を観て小谷野本を読んでいた

 新吉原は北か?

まあ、出張というものは行く前の準備や帰ってからのまとめが大変で、行ってる間は暇である。とくに飛行中は寝て食べる以外は何をしようということになる。上映してくれる映画もつまらないし、本を読むのが中心となる。だから、成田に行く途中で神田に寄ってもらい(今回は成田から東京まで往復車というお大尽旅行)、まだ読んでいない小谷野本リストを店員に渡し持ってきてもらった。コンピュータのお陰で店員の動作も速いから、すぐに車に戻れて満足。ただし、例の『実話漫画ナックルズ』は入手できなかった。

いずれ(多分、本家の話題なので本家にするかもしれないが)『日本売春史』(2007)に関連して聖書の娼婦・遊女を取り上げてみよう。『帰ってきたもてない男』(2005)などは、書中に出てくる現代日本の評論家の名前も素性もわからずピンと来なかったが、『日本売春史』は文句なく面白かった。小谷野先生の真骨頂は、やはりご専門に関連する著作に現れるのであろう。日本文化が中心とはいっても、いつも比較文化の立場から考察されるので、キリスト教に関連して荒井献(新約学)と岡田温司西洋美術史)が引用されていた。クズ学者ではなく、この二人のようなホンマモンの研究者しか参考にしていないのは流石である。

しかし、聖書(旧約・新約)そのものを読んでみれば、旧約聖書の第一巻「創世記」から娼婦・遊女(単なる尻軽女や不倫女ではなく、売春を生業とする女)は登場するのであって、新約聖書の第一巻「マタイ伝」第一章のイエス・キリストの祖先にも娼婦がおり、かつ不倫女が含まれているのだから、それらについても改訂版では書き加えていただけたらと、聖書の業界人として思った次第だ。いずれ主な売春の登場人物と事件だけでもブログに書く予定だが、予定がたくさんあって困っている。(売春でも不倫でもない通常の恋愛でも、セックスを知らなければ理解できないという非常に艶っぽい話は聖書に多いから、聖書を読むのは1413歳以上になってからにしてくださいね。←どうして1413? ほら、PG13の映画ってあるでしょう。なんか、どこかの牧師に怒られそうなことを書いているな、俺。) なぜ訂正したかというと children 13 and under(13歳以下)と思い込んでいたのが、実は children under 13(12歳以下)だったから。つまり13歳ならいいのだ。おませな子ならセックス経験がなくてもなんとなくわかる年だな。

The Bucket List は文句なく面白かった。飛行機の映画など時間つぶしにもならないくらい面白くもないものが多い中で、これは面白かった。しかし、これもある程度人生を積まなければどこが面白いかわからないかもしれない。帰ってきてからもう一度観るつもりでネット検索したら、日本でもこの5月に公開とかで、題は『最高の人生の見つけ方』などというクソ面白くもない題になっているらしい。大橋教授でも言いそうなことだが、私もいっそのこと『バケット・リスト』とでもしてほしかった。

いったい、この日本版の公式ページとやらでは bucket list を訳したつもりなのか、「棺おけリスト」などとやっていたが、bucket に棺桶の意味はない。Bucket list というのは英語版WPにもCarter begins writing a "bucket list," or things to do before "he kicks the bucket." とあるように、死を前にしてするべきことを書き出したリストのことである。だから、遺言でも棺桶でもない。Kick the bucket というのは die と同じ意味で、単に死ぬことだが、バケツを蹴って首吊りするところからこの言葉ができたという説はある。しかし、あくまでも自殺に限らず、単に死ぬことだ。あんな変な題名の、いかにもつまらない題名にした人は、この英語の言い回しがわかっていたのだろうか。