Comments by Dr Marks

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ブログ・シャバートの前に随時書き込み(★Kike!―★Leadership!―★Chutzpah!―★Deview!)

★Kike と書いてカイクと読む。★ れっきとした英語だ。ウェブスターでは1904年初出で、語源不明とあるが、WPではいろいろと書いてある。意味は「快苦」(嘘だけど)。有力な説にエリス島が絡んだ話があり、それも一つではない。その幾つもある中で一番信じられているのが(といっても統計上や語源学上でなく、身の回りでの印象にすぎないが)、アシュケナージユダヤ人でも、19世紀末頃から移民してきた東欧からの人たちに語尾がkiとかkeの苗字が多かったことと関係があるらしい。

これらのユダヤ人は皆みすぼらしく、教育もないユダヤ人が多かった。今は事情が違う。ほら、金も学もある例のバナーンキ(Bernanke)などもそうだね。近所に住んでいた不動産業のPlotkeさんもそうだし、レンタカー会社のPenskeもそうかもしれない。何だ、みんな金持ちじゃないか。

いや、当時は着の身着のままが多かったのかもしれない。1年ほど前に近所でエステートセール(親の住んでいた家などを親の死後に売るときは、家中のがらくたや家具などを売っ払ってしまう)があったとき、買いたい絵があった。白紙にカーボンで書いた素朴なものだが、エリス島から上陸したばかりのようなみすぼらしい爺さんの絵だった。ズックのカバンを肩から提げ、厚手の粗末な外套を着ているが、全身痩せこけているのが印象的だ。

ちょっと高かったので止したのだが、今になって惜しいと思う。あの家の住人は、あの絵を見ながら暮らし、多分、老人ホームに移ったか死んだ。何を思って壁に掛けていたのか、誰か身内の絵なのか(対象かスケッチした人間のどちらか)、さまざまな思いが巡る。

さて、この言葉も、ユダヤ人に向かって言ってはいけない。もっとも、この言葉を人にぶつける人たちは、ユダヤ人自身なんだ。ユダヤ人差別なんて言うけれど、ユダヤ人を差別しているのはユダヤ人なんだ。ドイツなどから先に移住して、やっとアメリカで豊かな暮らしを送っていた頃のユダヤ人が、貧乏でみすぼらしく、頭もとろそうな新参のユダヤ人を見て近親憎悪というか、Kike! といって馬鹿にした。

今では、そういった貧乏人の中から(ご先祖が貧乏人かどうかは知らんが)連邦準備制度理事会(FRB)議長バナーンキ博士のような人も出てくると、出自はともかく、ビヴァリーヒルズの高級住宅地のユダヤ人は、我が町のユダヤ教正統派の貧乏人を「けっ、カイク野郎」などと見下す者もいる。こいつらは、オバマに一人2万7千ドル(法定限度)寄付するのも何でもないが、貧乏人は10ドルの小切手をやっとこさマケインに送ったりするんだな。こんなことは、日本の人は知らんだろうな。草の根運動はマケインのほうなんだよ。

ブッシュ大統領指導力★はすごいな。(小泉君もすごかったけど、彼は66歳で引退だって。何だよ。4代目を立てるのかい。日本社会は政治が停滞するわけだ。)私は基本的には国家が過剰に経済に首を突っ込むことには元々反対で、今回のサブプライムローン関係の救済には反対だったが、幾つかの原案の修正を経て近日中に通りそうだ。昨夜、ブッシュ大統領は国民に向けて理解を求め、今日はオバマも含めてホワイトハウスに主なる議員を招集して説得してしまった。すごいリーダーシップだな。私も、当初は反対だったが、説得されることにするわ。お陰でトヨタの株も上がったようだし。(と、思いきや、その後立ち往生のようだが、情勢が変わったのも確かだな。)

★思いつくつど書き込む。まず、Chutzpah!★ 普通、イーディッシュで「厚かましく、生意気で、傲慢なこと」をいうとされる。先日、裁判官が原告に向かって「Chutzpah!」と一喝した。この原告はユダヤアメリカ人。あちゃー、まずいんじゃないの、とは思ったが、この言葉はユダヤ系の人に向かって言って、もっとも効果的だ。(裁判官には、教育的指導の権威もあるから、このぐらいのことは構わないかもしれない。)

早速、日本語ウィキペディア(WP)を見たが載っている。しかし、惜しむらくは見出しの発音が「フツパー」となっているが、関係者さん、「フーツパー」と直しておいてほしいな。もっともイーディッシュだから、ローマ字表記もいろいろではある。CHをフと読んでもらえないので、hutzpah という綴りもある。また、khutzpah という玄人好みの綴りもある。

イーディッシュだと書いたが、私の現代へブル語辞典にも載っていて、その綴りはחוצפהだから、やはりフーツパーでなければならない(同じ長音でもパーでなくフーにアクセント)。意味はやはり、「impudence, "cheek"」となっている。語源的には、社会から追い出してもいい「はみ出し者」ということだろう。(フーツが「外部の」という意味。フーツパーな人間は、現代ヘブル語でフーツパンとなる。現代、現代って、第一、BDBなんかには、すなわち聖書用の辞書なんかには登場しない言葉だよ。)

なお、日本語WPで、よい意味にも使われると書いてあるが、そのように考えるのは危険だ。フーツパーと言われて喜ぶ人間なんていないよ。用心、用心。それから、具体的にどんな人間かというと(フツパーは原文通りだけど、フーツパーに直してね)、

たとえば、両親を殺しておきながら、法廷で「哀れな孤児にお恵みを!」と求める少年はフツパーの体現者である。

と紹介しているが、その通り。今では本や法学系専門書でも取り上げられているからだが、この小話はイーディッシュの環境で育った人なら昔から知っているらしい。二度ほどこのブログに登場した友人(4/4のユダヤアメリカ人で、学生が馬鹿だからといって教壇を降りてしまった例のフーツパンですよ)から、その話は大昔に聞いたことがある。

猫猫先生猫猫ブログに deview という言葉が★出ていて腹を抱えて笑った。太宰的に言うなら、帯をほどいて笑ったのだ。

もちろん、こんな言葉が英語にあるはずはない。小谷野先生の冗談用の造語だ。英語の辞書引いても無駄だよ。あるかもしれないから、おいら、念のためにウェブスター引いたもん(笑)。(ただし、ネットで検索をかけるとテレビ関係で出てくるね。それと、猫猫先生とマークス博士のブログ。)

日本の文芸評論家が、debut というフランス語をご丁寧に「ヴ」とやらかす、おばかちゃまをからかっているのだ。