Comments by Dr Marks

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ペテン師映画屋ヤコボヴィッチ(Jacobovici)の嘘とトリノの聖骸布の法螺(Quackery)

あまり面白くもない話が続いたが、寝る前に思い出したので。今日一番面白かったのは、メディアがいい加減な考古学の報道をすることに焦点を当てたセッションだった。確かに、一般向きの興味本位の本は大部数売れるのに、真面目な専門家の本は図書館で埃をかぶっているものだ。

何人かの演者がいたが、圧倒的に面白かったのは二人。私が本家のブログにも書いたことのある「失われたイエスの墓」で名をあげたユダヤ人のペテン師プロデューサー Jacobovici の別の作品 The Exodus Decorded を取り上げたL.A.郊外ペパーダイン大学(ほら、何とかいうテニス選手の代議士が卒業したと嘘をついたお坊ちゃん大学ですよ)のクリス君の発表と、イタリアはヴェニスのアントニオ君のトリノの聖骸布の出鱈目暴きだった。

実はクリス君(R. Christopher Heard)の今日の話は彼のブログにそのままある。どうやら、ヤコボヴィッチは彼のブログを嗅ぎつけてコメントを寄こしたりするらしい。しかし、この勝負は間違いなく専門家であるクリス君の勝ちだ。第一、ヤコボヴィッチは歴史的な事物を鼻から取り違えているのだ。詳しくは彼のブログをどうぞ。

クリス君によると、ペテン師はいつも、まず権威に疑いをもたせるように大衆を仕向ける、次に飛躍した結論に導いて、なおかつその結論を前提に飛躍する。時代的な考察も大雑把。なんか、これは猫猫先生なんかも言いそうだな。そういえば、時代考証がなっていないといつもブログに書いている。

クリス君のブログ→http://www.heardworld.com/higgaion/?p=360

アントニオ君(Antonio Lombatti)は、私の英語はわかりにくいかもしれないが、などと言って、なんのなんの、大した英語であるよ。ネイティヴも顔負け。それで、科学的な方法を種々駆使して、古代1世紀頃のユダヤの墓地5500の中で死体を覆う布があった65例を精査した。布の材質、織り方、等々を比較したところ、比較的近いのはクムランの墓地にあった布だが、それも織り方や第一に放射性炭素年代測定が合わないので、真のイエスを包んだとは言いがたいことがわかる。彼は、この法螺話を評して quackery だという。擬似科学みたいなものだな。

ところで、楼蘭辺りの死体も木綿でなく羊毛で包まれているが、古代のユダヤでも木綿ではなく羊毛が圧倒的に多い。木綿とした意味などは、これから調査が必要だろう。おおっと、それは福音書の記述が木綿ということで、トリノの聖骸布なんて、実はまともな初期キリスト教関係の本には登場しないのだよ。まさに、専門家は聖骸布なんて初めから無視。アントニオ君が正式に臨終宣言したようなものだ。(アントニオ君が面白おかしく、権威的な基本図書の表紙を幾つも写しだして、この本にも聖骸布への言及なし、この本も、この本も、一言も触れていない、とやって会場大笑い。)

トリノの聖骸布http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E9%AA%B8%E5%B8%83
アントニオ君の所属→http://www.veneziastoria.it/