Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

ディヴナ・リュボイェヴィッチ(Divna Ljubojevic)のチャント―キリスト教の声明(しょうみょう)

数年前にカテリーナ修道院(現エジプト)のイコンがL.A.のゲッティー美術館に来たときに「これは逃すまいぞ」と観に行った。(本家に書いたかな。)最近、知人の女医さんが元パイロットの旦那さんと(と聞いただけで金持ちとわかるな)、羨ましくもエジプトを旅してシナイ山やカテリーナ修道院も見物してきたそうだ。

ふらんすに行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」と同じで、仕方なくあのとき美術館で買った写真集や修道僧のチャントのCDを取り出してみた。仕事しながらバックグランドにギリシア語のチャントを流していたら、日系アメリカ人が入ってきて「仏教のお経か?」と聞いた。ギリシア語など知らないし「お経」と思ったらしい。確かに真言声明(しんごんしょうみょう)でも聞いている感じがする。

1970年ベルグレード(Belgrade/ベーオグラットゥBeograd)生まれのセルビア人歌手でディヴナ・リュボイェヴィッチという人は正教徒の間で有名な歌手らしい。昔からのキリスト教徒のチャント(chant、短い聖歌)を歌っていてくれるので紹介しよう。『クリストス・アネステー』で「クリストス・アネステー・エク・ネクローン(キリストは死よりよみがえりたもう)」と歌われている。(クリストスは「フ」リストスと聞こえるはず。)死からの復活はキリスト教の基本的な信仰だな。

もう一つが『キュリエ・エレイソン(主よ、憐れみください)』だ。これらはよく誤解されるが、ギリシア語で歌うからといってギリシア正教徒の独占のものではない。ローマ・カトリック教徒もプロテスタント諸派も好んで原語(ギリシア語)で歌う。声明にサンスクリットが残っているようなものである。訳してしまうと気持ちが合わない。めげると思わずキュリエ・エレイソン!、と叫んでしまう。

(なお、キュリエの前の祈りは『アクシオンエスティン(賞賛に値する)』という神を産んだ(テオトコス)聖母マリアを称えるもので「ケルビムやセラフィムよりも称えられるべき祝福された(マカリズィエン)染みもなき方で、あなたはロゴスを産んだ」といった内容である。)