Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

健康で貧しい街

城郭都市はみんなこんなであったろうと想像できるのがエルサレムの町だ。旧市街は、十重二十重に道筋が入り込んでいて、更に坂と階段が複雑さを増す。平面の地図上では交わるはずなのに、実際は上下の次元が絡んで行き着かず、とんでもないところに出てしまう。

観光の商店街だけ見ている人はビジネスの街だと思っている人もいるが、とんでもない。とくに東北部のアラブ地区は、もっとも貧しい人たちが実際に住んでいる。午前中、半日の学校から帰った子供たちの声が、午後にはこだまするようになる。石畳の階段で大騒ぎし、転んでもへいちゃらだ。

ロスアンジェルスは最も足腰が弱るところで、東京に行くたびに東京人は偉いわ、と思っていたが、この町には及ばない。お陰で健康で、暑かろうが寒かろうが我々のようには頓着しない。ユダヤ人街で、ほぼ完璧なアメリカ英語を話すラビに、どこかにエレヴェイターはないか、と聞いたら、だからアメリカ人は馬鹿なんだ、という顔をした。

現在の旧市街がローマ時代のものではない。70年にティトスによって破壊された。しかし、石造りの町であるから、西の壁のように神殿の南西の壁が今も残されている。また、城壁の西側が拡張されてはいるが、北東部のアラブ地区などのように生き残った部分がある。写真はローマ時代の石畳そのものである。

貧しい町であろうが、彼らにすれば、住所不定ベドウィンよりはましなつもりがおかしい。確かに、彼らは何千年も前(ひょっとしたらもっと古い)と同じように羊を飼ったり糸をつむいで生きている。都市部のすぐ側で、テントやトタン囲いの家に、暑かろうが寒かろうが、今も暮らしている。