Comments by Dr Marks

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本来の柔道って何さ? 諸手狩りがどうして卑怯なの?

国際柔道連盟のルールが変わるそうだ。立った位置から下半身(1本の足でも)をタックルする形で取る業は違反行為となるそうだ。理由は、やれ後頭部を直撃する可能性があるので危険だとか、あれは元々邪道で本来の柔道に戻すだけだとか、いろいろ……わからん。

紅顔の(厚顔の?)美少年だった頃、嫌だったのに柔道をやらされた。どういうわけか練習試合では身長で対戦させられることが多く、向こう側は頑丈な大男の黒帯ばかりだった。私は(驚くなかれ)当時はひょろっとした体躯なのでたいてい負けるし、たまには見事に一本背負いで放り投げられることもあった。ありゃ、受身をやっても痛いし、人前でかっこ悪いとつくづく思った。

その日はどうしても勝ちたかった。こちらは白帯、あちらは三段間近の二段だった。上背もわずかに相手のほうがあるように思えたから、思い切って懐に入り込み、相手の両足を抱え込んで引っ張った。諸手狩りという立派な技だ。相手は見事に転がったと思ったが、判定は1本ではなく技あり。そのまま押さえ込みに入った。

二、三段も段差があると、押さえ込みも上手くはいかない。普通は難なく返されて、逆にしっかりと押さえ込まれてしまう。ところが、相手の動きがいつになく鈍く、結局押さえ込みのポイントを加算して1本で勝った。見ると、相手は鼻血を出している。確かに、倒したときの衝撃は強いのかもしれないと思った。

しかし、本来の柔道は「柔よく剛を制す」ではないか。小兵でも大兵を破るのが柔道だ。諸手狩りというのは、確かに見ていても、技をかけるほうの選手がむしろ無様に見える。そこが邪道に映るのであろうが、身を捨てての良技だと今でも思っている。諸手狩りのない柔道など、もう見とうはないわ。