Comments by Dr Marks

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対で覚えるイディオム "Break through" と "Go for broke!" (口語英語表現でごまかすブログ No.18)おまけ:最新の意味の“Jailbreak”

久しぶりのイディオムだが、今回は軍隊用語で対にしよう。しかし、どちらも軍隊とは必ずしも限らない。むしろ、break through のほうは「ブレイクスルー」とそのままの形で日本語とした場合は、じっと潜んでいたり、ずっと長い間日の当たらない場所にいた者が突然に脚光を浴びることだが、英語でももちろんその意味で使う。しかし、そのほかの用法として大きなものは「相手を打ち負かす」という意味である。敵を打ち負かす。弱い自分に打ち勝つ。そういった意味で使われる。Finally I could break through my illness.(とうとう病気に打ち勝つことができた。)

“Go for broke!” というのは日系アメリカ人には深い思い入れのある熟語だ。第二次世界大戦中に、アメリカ生まれの日系二世で編成された(指揮官は白人)442連隊の合言葉となったからだ。太平洋戦争地帯ではなく、欧州戦線において勇猛果敢に独伊軍と戦ったことは今なお語り継がれている。意味は一般に「当たって砕けろ!」となっているが、その言葉のとおり、米軍の神風特攻隊であり、異常なほどの戦死者と戦果を上げた。トルーマンは彼らを顕彰して「You fought not only the enemy, but you fought prejudice and you won(あなた方は、敵だけではなく偏見とも戦い、そして勝った)」と言った。偏見はもちろん人種差別である。

この言葉も、もともとは軍隊用語ではなく、「有り金をはたく→全財産を注ぎ込む→全力を尽くす」という意味である。なお、for なしで単にgo broke は、「文無しになる=破産する」という意味となる。このbroke は、動詞 break の過去形ではない。形容詞である、念のため。

最後に、jailbreak すなわち脱獄だが、脱獄は外から助けられる場合もあるが、普通は獄の内部から外に逃げ出すことをいう。最近は、アップル社の仕様にないアプリケーションソフトを別の会社から仕入れて使うことを jailbreak と言っているらしい。つまり、アップル社のいいようにされてその制限の中で(獄中の囚人は決められた条件でしか外部に通じることができない)アプリケーション等を利用するのではなく、勝手に自由に(アップル社の獄の外に出て)その他の会社のものを利用することを、このように表現するとのこと。

確かに、このことはWikipedia にも載っていることなのだが、私は貧乏で iPad はおろか、iPodiPhone も持っていないので、今の今まで知らなかった。今晩(西海岸時間19日夕刻)の恒例のわが家の夕食会で、年配の女性が盛んに「脱獄、脱獄」と言っているのに、私だけが話が読めず、しばらくの間取り残されていたのであった。聞くは一時の恥、恐る恐る聞いてみて知った。余は遅れとる。不明の獄から未解放の未開人じゃ。笑ってくれ。