Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

「遠東」を Far East の訳語として日本人も使った(少なくとも加州の日本人は)

どうでもいいことだがメモ。今日の日曜日、ロスアンジェルスダウンタウンリトル東京)の在日コリアン系マーケットに行ったら、日本語で「おっ、兄ちゃん」と声を掛けられた。驚いて振り向く。数か月ぶりにあったMr. N だ。ただし、余はもうおじちゃん(おじいちゃんではないぞ)もいいところなので、兄ちゃんはリップサービス

昔、日系の教会で説教していたとき、説教の後で「あなたは私を知らないかもしれないが、私はあなたを知っている」とわけのわからないことを言いながら歩み寄ってきた人で、その後ずっと付き合っているが、しばらくぶりの再会だった。変な人だが、日本で先生をした後に米国留学し、ちゃんと州立大学で修士号を得たらしい。しかも、専攻が哲学と聞いておそれいった。今なお独身で、犬と猫と一緒に暮らしている仙人みたいな人でもある。

カボチャの選び方と辛くない青い韓国カラシを教えていただいた。刻んでから食べればいいそうだが、確かに理にかなっている。何本かに1本は辛いのが混じっていても、小さく刻んで混ぜ合わせれば、「辛い!」というダメージが少なくなる。早速、夕食に食べてみたが、茹でなかったので少しかたかった。しかし、味はいいし、ビタミンも豊富な「気」がした。

このマーケットは、純粋な日系マーケットとは言いがたい。純粋な日系マーケットは日系人というよりは日本人そのものが多い南のオレンジ郡に移ってしまった。コリア・タウンが近いダウンタウンでは、在日コリアンの店が、日系人とコリアンとシナ人を相手に商売するようになった。しかし、これがカリフォルニアでは元々の姿なのかもしれないと思った。それは、帰りしなに「遠東レストラン」と日本語で、英語で "Far East Restaurant" という看板をテンプル通りで見たときだった。

百年前のサンフランシスコ大地震以来、日系人の多くが南のロスアンジェルスに移り住んだ。その頃から、カリフォルニア(加州)の日系人は、Far East をホテルであろうがカフェーであろうが遠東と訳してきた。明らかにこれはシナ人の語法である。極東裁判が始まる前から、日本語としては Far East は「極東」と訳すのが本流だった。戦前の新聞でも、あるいは戦前に出版された日本語の辞典を調べてみてもそれは明らかだ。

ところが、ベイエリアを含め加州の日系人(日本人ではなく米国人となった日系3世以降)は「遠東」と訳すのを好む。中国人が経営する店なら当たり前だが、日系人経営の店も「遠東〜」となるのだ。たぶん、サンフランシスコの最初の日系人キリスト教会がシナ人の教会の軒下を借りて始まったように、シナ人、コリアン、日本人は仲良く暮らしていたのだろう。人間は現実的には仲良く暮らすしかないのに、政治が水を差してきた例はここにもある。