Comments by Dr Marks

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意味わかんねー、この糞イスラエル映画『海のかなた』(1991年、ヤコブ・ゴールドワッサー監督)(イスラエル映画でごまかすブログの何回目か・・・何回目か数えられん)


ろくでもない映画なのになぜ紹介するかって? こんな糞な国だということを知らしめるためだ、なんちゃって。本当は日曜の午後にDVDを観たからだ。しかし、イスラエルは余のような無名人であろうがつまらんことをよく調べていていきなり入国拒否したりする変な国だから気をつけてはいる。

クソ映画なのにイスラエル本国では九つも賞を取ったんだと、理由は自ずとわかるわな。もっとも俳優の演技やカメラワークやユダヤ人的冗談は見所もある。雑な映画ということではない。否、むしろ巧妙な自国の宣伝映画だとすれば秀作でもある。

1991年制作でもDVDになったのは4−5年前だ。ただし、舞台は1962年のテルアヴィヴの郊外と思われる。1962年頃の平均的なイスラエル人は貧しかったが、この主人公たちは比較的裕福である。中の上というくらいの庶民で、決して「金持ち」ではない。時代は周辺アラブ国との関係が思わしくないときではあるが、第二次と第三次中東戦争のちょうど中頃である。

『海のかなた(英題:Over the Ocean)』という題は、カナダのトロントから訪れたモーリスがテルアヴィヴのホテルの窓から地中海を指し示し、更に大西洋を思い浮かべ、「ほら、あの海のかなたにアメリカもカナダもある」と言った言葉からのものだ。また、この時代は、イスラエルから飛び出して再びアメリカやカナダへの移住が多かったときでもある。海のかなたにはエルヴィス・プレスリーの文化(文化と言ってよければ)も待っていたのがこの頃だ。

このモリスはナチスの収容所での生き残りで、メナヘムとローサも同年代の生き残りだった。メナヘムとローサは結婚し、ハイティーンの娘ミリと十歳の息子ハイムがいる。上記のような危険な国内事情と悪いボーイフレンドから安全なトロントへと、モリスの勧めでミリを送る。しばらくして、メナヘムとローサもハイムを連れてモリスらの住むトロントに移民するビザを取得する。店も三千ドルで売った。当時は結構な金額である。

ところが土壇場で、彼らはカナダには移住せず、むしろ娘もイスラエルに呼び戻すことにしてしまった。息子のハイムは面白い子で、当時はオンボロ車の多いイスラエルのことだから(今でもそうだが)よくエンストしたが、その際、ハイムが車に「家に帰れ」と言うと動きだす。最後のシーンでも、飛行場に行くはずのタクシーがエンストしたとき、「家に帰れ」と号令して出国を思いとどまる。もちろん少年がそう言ったのは、両親が結局移住を断念したからである。

さて、その理由なのだが、よくわからない。モリスを見て、また子供たちの将来を心配してメナヘムは新天地に希望を託すのだが、妻のローサはあまり乗り気ではなかったし、息子のハイムは幼友達から離れたくはない。どうやら一足先にトロントにいる娘も帰りたいらしい。しかし、子供のそんな気持ちは当たり前で、十中八九の子供は引越しを嫌がるものだ。いざとなってメナヘム自身が新天地に不安を抱いたのかもしれないが、いずれにしても納得できる理由がないのに、突然のどんでん返しでイスラエルに留まることになる。

我が家の家訓というより当たり前のことだが、こんなことをよく言う。「気の利いた奴は、暮らしにくいところから暮らしやすいところにさっさと出て行くものだ。どじで性根なしは、そのちょっとした冒険心もない。」まあ、一方的な偏見かもしれないが、我が家の誰もメナヘム一家の気持ちはわからんね。イスラエル政府としては、みんなに出て行かれたら困る、という気持ちはよくわかるけど。