Comments by Dr Marks

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チェルシーちゃんとマーク君の結婚は真にインターフェイス(Interfaith異なった信仰間の)なのか? 答:そんなこと、わかりはしないし人のことはどうでもいい

異なった宗教間の結婚(インターフェイス)は聖書的にみてどうか。好いわけがない。止めておけ、というのが勧めだ。何が不釣合いかといって、これほど不釣合いなものはない。これに比べたら、家柄・学歴・年齢・人種、等々の差など屁でもない。

この結婚は隠密作戦(covert-opt = covert operation)といわれており、招待された者にも詳細は不明ということであったが、少なくとも日時と場所は確定したようだ。2010年7月31日米国東海岸時間午後7時半から、ニューヨーク州ラインベック(Rhinebeck, N.Y.)のアスター・コート(Astor Court)という大邸宅で行われる。式場の所有者はクリントンの友人で富豪の一人だ。実際の結婚式の費用は、日本のエビ何とかという芸能人の費用より安いかもしれない。(正確にいうと、当地の当日の日没時刻はラビの暦では7時56分だから、シャバットの日が終わらないうちに始めるということになる。)

今から30年くらい前なら、東京の街であっても、ユダヤの男が結婚したいときはなるべくユダヤの娘を探した。よくもまあユダヤの者はユダヤの者をうまく見つけるものだ、と思うかもしれないが、話は逆だ。たまたまお互いに好意を寄せていたとする。次に、家族関係を話の端々などから探ってみてユダヤ人とわかったら、結婚を前提に付き合ってゆくというにすぎない。また、名前から容易にわかることもある。

それは、ユダヤ人同士が結婚しないと、なかなか難しいということを知っていたからだ。しかし、アメリカのユダヤ人は徐々に異教徒との結婚が増えて、今はインターフェイスが3分の1を超えているそうだ。先日知り合ったロスアンジェルス・タイムズのユダヤ人記者も、「家の奥さん、ニホンジンでーす」などと言っていた。しかし、場合によっては、インターフェイスは結婚の継続が非常に難しい。

我が家の娘猫 Tisha Maria を連れてきてくれたドイツ系ユダヤ人の苗字を持つドーラ小母さんはカトリック信者で、罰当たりのユダヤ人(苗字の男)と結婚して一女をもうけたが、結局はガチガチに固まったユダヤ人姑との関係で離婚した。彼女と娘さんはユダヤの苗字を引き継いだが、娘さんもカトリックの信仰で育った。夫はカトリックの中から探すそうだ。そのほうがいい。ついでにユダヤ人の苗字も捨てればいい。

夫がどうでもいい信仰の異教徒ならまだいい、とインターフェイスに怯えるユダヤ人の親御さんは考える。物わかりのいい夫が、男の子の割礼に賛成してくれてバルミツバ(13歳の成人式)もやってくれるなら、何を信仰していようが、あるいは信仰などなかろうが問題ではない。そのようにユダヤ人の娘が育てた孫は全部ユダヤ人だからだ。ところが、ドーラ小母さんのケースはよろしくない。たとえ、この異教徒(カトリック信者)の母親が孫の割礼を許してくれたとて、孫の信仰告白がなければユダヤ人ではないのだ。単に割礼のある異教徒にすぎない。

今マスコミ(少なくともアメリカの)で話題となっている二人には、チェルシーの両親(ビルとヒラリー)がプロテスタントキリスト教徒で、マークの両親(エドマージョリー、ただし現在は離婚)はユダヤ教徒であるというインターフェイスの問題がある。どちらかが改宗するんだろうか、あるいは式はどの宗教でするんだろうか、などの話題は尽きない。そんなことは、端で勝手に噂するだけで、当人たちは深刻に考えていないのかもしれない。かつて日系の聖公会教会の若い白人牧師がユダヤ人の娘に恋をしたときは大変だった。牧師がユダヤ教に改宗させられるのではないか、と。しかし、彼女があっさりとクリスチャンになってしまった。

さて、このご両人の場合はどうか。ボストン大学のポーラ・フリデリックセン教授のようにチェルシーユダヤ教に改宗する率のほうが高いと思う。なーに、改宗するといっても気違いの超正統派とか正統派ではない。比較的進歩的ではあるがユダヤ教の体裁は保っているというだけの保守派ユダヤ教だ。チェルシーの両親にしろ、たいして熱心なクリスチャンではないから、チェルシーへの希望は、自分たちの葬式はキリスト教会でやってくれ、程度であろう。譲歩はできる。どちらに転んでも、このご両人は宗教面での葛藤はなかろう。しかし、なるべく親類付き合いもうまくしたいなら、チェルシーユダヤ教改宗が無難だ。

ところで、夫となるマークの両親だが、ウクライナから来たユダヤ人の子供であるマークの父親エド・メズヴィンスキー(Edward Maurice Mezvinsky, 1937 - )は誰しもユダヤ人であることを疑わないが、母親のマージョリー・マーゴリーズ(Marjorie Margolies-Mezvinsky, 1942 - )はユダヤ人ではないという噂もある。しかし、わかる人にはわかる。マーゴリーズって苗字は本来はマルゴリス(Margolis)というリトアニア系の典型的なユダヤ人名だ。

両親ともに下院議員であったが、母親のほうはエイミー賞受賞のNBCの売れっ子報道ウーマンでアイヴィーリーグ(ペン大、University of Pennsylvania)出の才媛で美人というほかは、生い立ちなどを公表していないのがユダヤ人ではないという噂になったのであろう。父親はカリフォルニア大のヘイスティングズ法科大学院(サンフランシスコにある UC Hastings Law School)を出た弁護士だったが、政治に興味を持って下院議員になり、後にゼニカネ(銭金)に興味を持って詐欺師となり、一昨年の4月までフロリダ州の有名な連邦刑務所に服役していた。

母親よりもこの父親エドの人生のほうがよほど面白く、小説が書けたら小説にしたいくらいの男だ。母親はまったくの優等生で、育った地元のアイヴィーリーグからNBCの報道に携わり賞をもらい、下院議員になり11人の子供を育て(内訳:エドの先妻の子4人、エドと自分の子2人、他に養子など5人)エドが破産して刑務所に入ると離婚し、母校ペン大などで教鞭をとって暮らしている。エドは、こんな簡単には紹介できないほど破天荒な人生だ。親類の間では気違い扱いだから、裁判でも精神分裂病を自ら主張したが却下されて有罪となった。とても紹介しきれないから、簡単な記事だけ紹介しておく〔http://crab.rutgers.edu/~mchugh/nigeriamezvinsky.html〕。ええーっ、ナイジェリアからの手紙だよ。

結論として、この異信仰間の結婚は、とりあえずは深刻な問題を惹起しないと思う。しかし、チェルシーのほうが本気でユダヤ教に改宗しない限り、悶着が起こらないとは限らない。救いは、親類がとやかく言わなければ、またマークの母親マージョリーが進歩的でユダヤ教にこだわっていないならば、ゆるい信仰でごまかしておけるだろう。

ただし、ユダヤ教というのは家の宗教なので、若いときは自覚しなかった者も、年取ってから熱心になるケースが多い。カーク・ダグラスも年配になってから熱心になった。マークの父親エドも、刑務所の中ユダヤ教を学びなおしたそうだ。中学からの仲良しで、マークがいるからスタンフォードに行ったチェルシーちゃん。(チェルシーはエール大に行けた。)マークは年取ったら豹変するかもよ。超正統派になったりして。まっ、墓場が近くなるとお寺に通いだす日本人みたいなものだが、・・・ご用心、ご用心、お二人さん。