Comments by Dr Marks

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Can I Help You? でなくてWhat Do You Want? だけど What Did You Do? ならば

予約なしに我が家に訪れるのは、よほど親しい身内か、戸別訪問の物売り、署名集め、ものみの塔、泥棒などであろう。普通は、我が家は二人ともフルタイムで雇われていることはないが仕事に出かけたり遊び歩いている。後は留守番上手な猫のティシャ・マリーアちゃんくらいだ。だから、訪問するつもりなら予約するかあらかじめ電話することになる。

我が家は純粋な住宅地にあり、車の通りも少なく、この辺りのほとんどの家同様に門などなく、芝生の間の小道を通って玄関口に直接アクセスできる。だから、夜間は予約のない客が玄関に来ても出ないし、変な奴なら玄関の下駄箱の中の拳銃で追い払う。留守のときも、契約したセキュリティー会社が数分でアームド・レスポンス(武装して駆けつけること)してくれる。

さて、この話は夕方といってもまだまだ明るいうちの話なのだが、身なりはいい黒人の若い男が我が家の玄関からそそくさと出てくるのを、ちょうどドライヴウェーにアプローチした余が見つけた。余は早速彼に近づき言った。何と言ったか。Can I Help You?(ご用件は何でしょうか?) まさか、そんな柔なことを言うのはおかしい。玄関口でにこやかに話すならともかく、そんなふうに言う状況ではない。

普通なら、What Do You Want?(何の用事か?)であろう。それでも角が立つのが嫌なら、What Do You Want, Sir? でもよい。しかし、余が発した言葉は、What Did You Do?(おめえ、何しやがった?)なのだ。奴さん、びびったね。ハイトーンで、No, I Didn’t Do Anything!(いえ、何もしていません!)

慌てて立ち去ろうとしたが、手に何か書類のようなものを持っているので呼び止め、今度は優しく What Do You Want? と聞いてやったら、雑誌講読の話をしだした。どうやら、講読勧誘の商売を忘れるほど余の言葉に驚いたらしい。帰るときに我に返って彼が言うには、「だって、What Did You Do? といきなり言われて怖くなりましたよ」だってさ。

家に入って、細君に「誰か来たろう」と言って、その話をしたら、「ああ、あの子ね、可愛そうに」となってしまった。そりゃそうだ、商売にもならずに脅かされただけだからね。我が家には猛犬はいないが、猛犬以上の人間がいるから気をつけてほしい。ピストルをやたらに振り回すから狂犬以上かもしれない。そうそう、廊下には日本刀も立てかけてある。