Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

Expat について徒然なるままに


マーク・グッドエイカーが Twitter で自分のことを “an expat” と言っていた。ああ、この人はいつまでもアメリカには溶け込めないのかなあ、と改めて思った。アメリカの大学に就職して5年は経つはずだ。余の恩師が彼と同じ英国より渡米してすぐに米国帰化手続きしたのとは好対照である。ひょっとして、彼はオックススフォードの椅子に未練があるのかもしれないが、今のところ彼はお呼びではないであろうに。

おっと失礼。Expat とは、辞書にはexpatriate で載っているもので、「自国外に住む者」という意味の英語だ。ラテン語の語源もそのままで国外居住者のことだ。エトランジェ(異邦人、ソージャーナー)とは別で、実際は短期と永住とを問わない。支那人の華僑やユダヤ人のディアスポラを指すこともできるが、ニュアンスとしては現地に同化(帰化)せずに暮らす者のことで、日本からの派遣社員なども expat(エクスパット)と言って構わない。つまり、現地雇いではないということだ。派遣社員が現地の国籍を取ったら、その時点で普通はエクスパットとは言わない。

さて、余がたびたび言及してきたことであるが、日本人というのは、どういうわけか米国国籍を取ろうとしない。お陰で誤解されるし誤解されてきた。そもそも米国のグリーンカード(永住権)というのは、永住(パーマネント)という言葉とは裏腹にテンポラリー(一時的)のものと解釈されている。この間に本人また米国政府が問題なしとなったらグリーンカードを返納して帰化することを奨励している。

日本人が米国国籍取得を躊躇するのにはさまざまな訳があるのであろうが、一つ制度的に日本政府が二重国籍を認めないということもあろう。多くの国は二重国籍を認めているので米国籍を取るのは気が軽いのかもしれない。米国に暮らす限り米国籍を持って政治にも発言権を持ち、市民として政府に篤く保護してもらったほうが実際は得策だ。

実際、死ぬまでアメリカにいるのに米国籍がないのは、何か重大な欠陥があるのかと勘ぐるのが普通のアメリカ人だ。もちろん、国籍取得は、手続きだけで済むグリーンカードとは別で、アメリカの政治・歴史や英語の試験がある。しかし、そんなものは中学生程度の理解力があれば合格するレヴェルであり、実際、日本の高校入試より簡単だろう。(なお、20年以上在住し、70歳以上であれば、通訳つきで試験が受けられる特典がある。)