Comments by Dr Marks

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「死海文書」から[肉体の]復活断片(4Q521):余の日本語訳(もどき)も付けた。「もどき」だから文句言うべからず。

The Complete Dead Sea Scrolls in English (Penguin Classics)

The Complete Dead Sea Scrolls in English (Penguin Classics)

The Dead Sea Scrolls  -  Revised Edition: A New Translation

The Dead Sea Scrolls - Revised Edition: A New Translation


おとといに引き続き「死海文書」から。今日は「復活断片(Resurrection Fragment)」とか「贖いと復活(Redemption and Resurrection)」あるいは「メシアの終末啓示(Messianic Apocalypse)」というニックネームで呼ばれる4Q521を紹介する。

死海文書」写本そのものの映像がグーグルとイスラエルの考古文物庁の共同でオンラインでいずれ提供されるであろうが、提供されても一般にはなかなか読みこなせない。ヒブル語(ヘブル語)が自由に読みこなせれば古文書といってもそれほど困難ではないのだが、虫食い部分が多いので学問的に類推して読みこなさなければならない。

しかし、先日言い忘れていたが現代語訳はある。日本語があるかどうかは知らないが、比較的手に入りやすいもので本文が英語に訳された本を2種類紹介する。余はどちらも持っているが、ヴァメーシュのほうが解説や索引がよく、本文通読にはワイズ・アベッグ・クックが便利だ。訳文を比較するためにも両方あるとよい。

なお、これを日本語に訳す際は全文をひらがなで書くのでなければ訳しづらい。理由は断片の虫食いのせいで漢字にまとめきってはならない部分が多いからだ。例えば、「体」とまとめきることのできない「から・」とか「・・だ」などの断片が多い。(「・・」の部分が虫食い。)ともかく部分を訳してみる。[ ]内は虫食いを推量で読んだところ。

[て]んも地も聖なるメシアに聞き従うので、その中にある[すべ]てのものは聖なる方の命に背くことはできない。強くあれ、聖なる方に仕え、主を呼び求めるお前たちよ。


お前たち、すべて心に望みを抱く者よ、主を見出すことができないというのか。主は敬虔なる者を心に留め、義なる者たちの名を呼んでくださるというのに。貧しき者の上に聖なる方の霊が留まり、信仰篤き者に聖なる方の力を新たに注いでくださる。


また、聖なる方は、ご自身の永遠の王国の[かん]むりで敬虔な者を誉めてくださる。聖なる方は囚われ人を解放し、めくらの目を開き、腰のま[が]った者を真っ直ぐにされる。また、[のぞ]みを抱く者をえ[いえ]んに固く支え、聖なる方の真実のうちに[・・・であろ]う。また[よ]い行いの[かじ]つは遅れることなく誰にも届き、主はまだ果たされていなかった栄光を[主が語]られたように、成し遂げられる。


聖なる方は瀕死のけが人をいやし、死人をよみがえらせ、貧しい者によき知らせを告げる。

参考までに。ネットで見ることのできるリストにこういうものがあるが部分的である(http://jewishchristianlit.com/Resources/Texts/dss.html)。また、余の嫌いなテイバー博士のところにも4Q521 の部分があるのでどうぞ(http://religiousstudies.uncc.edu/people/jtabor/4q521.html)。確かに、これはイザヤ書61章の冒頭と似てはいるが、むしろマタイ伝11章5節に酷似している。新約にあり旧約ではなかった表現が、この「死海文書」にあったと言うことはできる。しかし、イエスの死と復活の衝撃は、すべてイエス以前の「死海文書」等に示されたことを当て嵌めた作り話であるとするのは、多分、議論の行き過ぎであろう。