Comments by Dr Marks

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No.1.

イーディッシュ語(Yiddish language,ייִדיש )別名ユダヤ人ドイツ語(Judeo-German)について

ラテン語を日常生活で話す人はいないが、式典や学術用語には生きている。しかし、死にかけているといわれるこの言葉は、ともかくも日常で使う人が数万人はいるといわれている。しかし、ほとんどが高齢者で、イーディッシュ(イーディッシュだけでもイーディッシュ語の意味となるので以下はイーディッシュとする、なおイーディッシュとは「ユダヤ(人)の」という意味)を語れる者は少なくなっている。

それでは、どれくらいの人間が(ユダヤ人とはかぎらない)この言葉を使っているのかというと各国語のウィキペディアや言語地図でみると、多いものは全世界で300万人としているが、不思議なことにイーディッシュ版ウィキペディアではもっとも低い見積もりの150万人となっていた。しかし、これでも第一言語としている者は更に少ないであろう。

イーディッシュの起源は諸説あり、今でも論争は続いているので、そのような話は後日機会があったらということにしておく。はっきりしていることは、この言葉の骨組みは、別名ユダヤ人(の)ドイツ語といわれるごとく、ドイツ語である。ドイツ語の中に古代ヘブル語(Hebrew)の口語化したアラム語(Aramaic)の語彙が組み込まれていると考えればよい。文字はヘブル文字(活字体・筆記体)が基本である。

しかし、この言葉を使うユダヤ人のグループはアシュケナージ(Ashkenazi)といわれる東欧系ユダヤ人であるから、ロシア語やそれぞれの出身地の言語が混入したし、発音も綴りも地域によって多種多様である。したがって、ニューヨークに本部のあるYIVO(別の機会に説明する)のイーディッシュ教育運動を別にすれば、標準イーディッシュの基準もないため、標準発音と標準綴りならびに標準文法のない共通語という特殊な立場の言語である。

主要な方言としては、ドイツ・オランダ・ベルギー・フランス(アルザス)等で使われる西方イーディッシュ(Western Y.)と東欧諸国と東欧諸国出身者が多いイスラエルアメリカ合衆国で主に使われる東方イーディッシュ(Eastern Y.)に大別される。後者は、また北方のリトヴィッシュ方言(Litvish)、中部のポイリッシュ方言(Poylish)、南部のウクライニシュ方言(Ukrainish)に分かれる。西方と東方では東方のほうが多く、東方の中ではポイリッシュの使用者人口が多い。