Comments by Dr Marks

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No.5.

いよいよアレフベイズ(アルファベット)の紹介だ

英語の場合もそうだが、アルファベット26文字の呼び名と実際にその文字を使った単語の音価が同じでないようにイーディッシュのアレフベイズアーレフベイツ)もそれは違う。更に正統な発音というのが存在しない言語であるから、鹿児島弁も弘前弁もどちらも日本語として正しいようなもので初学者にとってははなはだ心許ない。

しかし、文法も何もかも標準がないといっても、実際は異なるイーディッシュ使いがほとんど問題なく意思疎通が可能なのであるから、気にする必要もない。従って、教則本によって多少の違いがあったとしても、間違いがあるないのことではないと心得ておいたほうがよい。

私のイーディッシュ・シリーズにおいては、特別な教則本を使うわけでないので、そのつど私自身がそれでいいという説明をしていくことになる。ただし、発音の実例などにおいては、なるべくネット上で読者が検索でき、直に体験できるようなサービスを行っている機関の助けを借りるので、その機関のあるいは著者の意見を取り入れざるをえない。

早速、アレフベイズの表をOmniglot(http://www.omniglot.com/writing/yiddish.htm)というサイトから拝借して以下に示す。これを見ると随分とたくさんの文字があるように見えるが、基本的にはヘブル語と同じ22文字である。この22文字を表記の便利上組合せの表としたのがこの表であり、基本的にはYIVO(http://www.yivoinstitute.org/)という機関の教育方針に沿った表である。次回より一つ一つの発音の実際をこのYIVOのサイトを利用して学習していく。

なお、基本的な22文字についてカタカナでの呼び名と形を紹介しておく。実際の音声は次回紹介するが、カタカナ表記で満足できない場合は、とりあえず上記の表の音声記号を参照してほしい。

アレフ(א)、ベイズ[ベイトゥ](ב)、ギムル(ג)、ダレド[ダレトゥ](ד)、ヘイ(ה)、ヴァヴ(ו)、ザイン(ז)、ヘス[ヘトゥ](ח)、テス[テトゥ](ט)、ヨド(י)、カフ(כ)、ラメド(ל)、メム(מ)、ヌン(נ)、サメヒ(ס)、アイン(ע)、ペイ(פ)、ツァーデ(צ)、コフ(ק)、レイシュ(ר)、シン(ש)[点なし、または右上に点]、スィン(ש)[左上に点]、タフ(ת)

また、形はもちろん、呼び名もヘブル語とほとんど同じであるが、違う場合のみ括弧[ ]の中に示した。22文字のうちヘブル語由来の単語にしか使われないものもあるが、結局のところそのようなヘブル語由来の単語もイーディッシュの一部であるから今のところは無意味な区別はしないことにする。

今日はこの表を眺めることで終わりとしよう。なお、イーディッシュはヘブル語やアラビア語のように右から左に書く。また、このアレフベイズは印刷(活字)体であり、筆記体はいずれ相当に進んでから学ぶことにしよう。