Comments by Dr Marks

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No. 17.

イーディッシュを手書きするということ


このシリーズを長い間ほったらかしていたが、ときどき追加することにした。なーに、しちめんどくさい文法なんぞ、なるべくやらんよ。今日は手書きの紹介だ。

どうして紹介するかというと、なかなか印刷物ではお目にかかれないと思ったからだ。実際、最近まで手書き(筆記体)の印刷フォントは存在しなかった。あくまでも手書き用であって、印刷体はまた別なのである。

と、このように言えば、たいそうなことのようだが、現代へブル語でも事情は同じだ。てか、もともとヘブル文字の代用なんじゃ。本を読むためには活字体を覚えるのに、日常での読み書きは手書き文字なんだよ。変だよね。読むために覚えた字は、普通は書かないんだよ。

例えば、「人の二倍も賢ければ、そりゃアフォじゃねん」という文を書物で読むときには次のように書かれているはずだ。「ווען ער צוויי מאָל אַזוי קלוג, וואָלט ער געווען אַ גולם
ところが、この同じ文を手書きにすると写真の真ん中の2行になる。ただし、書き間違って前後入れ替えたところがある。

ちと、余談を。最後の「ゴイレム」という単語は、ヘブル語由来の単語なので綴りは普通と異なる。発音どおりではないので個別に覚えるしかない単語だ。もっとも、ヘブル語の素養があれば知ってるわけで、漢文に強ければ日本語の語彙が豊かになるようなものである。

なお、この単語の意味はひねくれている。普通にはダミーとか人形という意味であるが、人工的な人間(ロボット)とかにもなるし、白痴の意味にもなる。ここでは、人の二倍も賢ければ、結局は馬鹿と同じ、と取るほうが面白いだろう。

最後に言っておく。普通、神学校で旧約聖書としてヘブル語を習う場合は、手書き文字(筆記体)は使わない。印刷体どおりに手で書く。それはそれで覚えておいたほうがいいが、現代ヘブル語やイーディッシュ語の場合は、この手書き(筆記体)が必須である。

写真の字は誰が書いたって? 余じゃ。昔の人の書体のような優雅さはないが、読みやすい字を書くと言われておる。