Comments by Dr Marks

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内田ブログにあった(山崎貞『新々英文解釈研究』(研究社)からの例文)"He is an oyster of a man" について、一言

「彼は牡蠣のように寡黙な人だ」の英文だそうだが、かなりぎくっとする英語だ。文法的に間違いということではない。奇妙なのだ。ともかく、語感によって訳してみよう、「彼は人間という(名の)牡蠣だ」となる。ここでは同格の "of" が利きすぎて、こんなことを言われた「彼」なる人物は怒り出すぞ。使わんほうがいいに決まっている。

どうしても言いたかったら、"He is a man of few words like an oyser" くらいが無難であろうが、もう少し穏やかに牡蠣などの喩えを使わないほうがいいだろう。そもそも、寡黙というのはまったく話さないというのではない。牡蠣が時にはしゃべるという喩えが初めからおかしいことも原因かもしれない。だから、貝や牡蠣のようには口を閉ざす(shut the mouth)ことならわかる。なお、口を閉ざすなら、"He keeps his mouth shut like an oyster" とすれば普通にわかる。

もっとも、寡黙については状況によっていくらでも用法はあるから、それぞれに対応できるにこしたことはない。例えば、私のように寡黙だが、(いったん口をあけたら)常に為になることの要点を上手く語る人は、"Dr. Marks speaks scantily, but to the point" とか、"Rarely does Dr. Marks speak, but when he does, he speaks like a great orator" とかね。なお、前の例文は、「朴訥」だがのニュアンスあり。まあ、大昔の本にしがみつくしか能がないジュゲムジュゲムには真似ができんだろうが。(意地悪しちゃった。だけど、本当に変な英語を宣伝されても困るから毒消しね。)