日本の戸籍とアメリカの戸籍

猫猫先生が、宣教師の養女になつたが病気で渡米できなかつた可愛さうな娘の話の中で、アメリカ人の養子になつたからといつて一々日本の戸籍に書くか、と疑問を呈されてゐた。うむ、私も書かないと思ふ。

そもそもアメリカと日本とでは戸籍の考へが違ふ。アメリカで生まれたときには出生証明が作られて、外国から養女となつた場合は帰化証明が作られるのであつて戸籍はない。そして、多重国籍を認めるアメリカは、帰化した人物の出生国の戸籍の書き換えとか抹消を要求しないのだ。

もちろん、自主的に書き換えておくのは勝手だし、日本国から帰化した人が日本の国籍を抹消するのも勝手であって、アメリカは何も要求しない。（因みに、反対に、アメリカで生まれた日本人が成人になつて日本国籍を選択し確定したとしても、後で気が変わつてアメリカに戻りたくなつたら、出生証明を取つてアメリカ市民であることを主張し、アメリカのパスポートが取得できる。）

戸籍などなくても大丈夫だ。しかし、アメリカ流の証明もなかなか厳しいよ。例えば、その他の戸籍相当の重要な証明は、結婚証明と死亡証明だ。死んだ人の年金をもらひ続けるやうなことは無理。また、外国での結婚を隠しての重婚など、まず不可能だ。それぞれの理由は面倒なので省略する。しかし、Mr.トンチンカンの養女となつた旨日本の戸籍に書いておけ、などとは言われない。

えーと、念のため、養子に関する法律は州によって違ふ。また、foster child と adoption も違ふ。そして、これらは戸籍の問題ではなく、親権の問題だ。だから、養子、養子と云ふても、アメリカの国籍を取らないのであれば、そもそも日本の戸籍が云々の話しさへないのだ。