Comments by Dr Marks

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ガリラヤのイエスでなくカリフォルニアのイエスを求めて

今、多民族のカリフォルニアではガザを巡ってさまざまな思いを馳せているが、標題の言葉は、ゲルト・タイセン(Gerd Theißen [Theissen])が第三の史的イエス研究集団の一部をからかって言った有名な言葉だ。確かに、カリフォルニアにはジムじいさん(James M. Robinson)の息がかかった学者が多いわけだが、その中にはクロッサン(これも暖かいフロリダに隠居してじいさんだな、John Dominic Crossan辞めカトリック司祭)などもタイセンの念頭にあったわけで、そのココロは次のようなものも含まれる。

ガリラヤのあるパレスチナもカリフォルニアも地中海性気候で、実に似た四季と風光が双方にはある。もちろん、カリフォルニアは縦に長く、北と南の温度差は激しいが、それゆえにこそ地中海諸国のさまざまな気候がすべてあるとも言える。ガリラヤとなると、私のいるロスアンジェルスよりは北のサンフランシスコに近いかもしれない。サンフランシスコといっても(どうも私には昔からカリフォルニアの北のはずれという印象があるのだが)全カリフォルニアの真ん中にすぎない。だから、州都のサクラメントはサンフランシスコの近くだ。

このサンフランシスコから北に真っ直ぐ80キロほど北上すると、サンタローザ(Santa Rosa)という人口16万人ほどの町がある。サンフランシスコを中心にこの辺りまでは民主党でリベラルという土地柄だが、ここから先は人口のまばらな北カリフォルニアになって共和党の強い田舎が続くことになる。そして、この辺りまではそれほど冬寒くもなく夏暑くもない。そう、ワイン(ブドウ)に最適の気候である。

このサンタローザに故ファンク博士(Robert Funk)とクロッサン創立による史的イエス研究会ジーザス・セミナー(Jesus Seminar)の本拠地ウェスター研究所(Westar Institute)がある。1985年に創立された当時は、ファンク博士が聖書学の最大学会であるSBL(Society of Biblical Literature)の書記だった関係上さまざまな学者が集った。史的イエス研究者である我が師も参加して研究発表をなし、それは彼らの機関誌 Forum に載ってしまった。まだ、彼らの悪名(?)高からぬ頃、つまり、信憑性を投票で決するなどという蛮行が行われていない頃だった。

後になって、我が師を直接知らない人から彼らの一味(!)と誤解されることが多く、そのことを我々学生もからかったものだ。わざと、「先生はどうして Forum に論文を出したのですか」などと質問する学生がいたが、先生は汗を拭きながら真面目に答えていたのが印象的だった。その答? 上述の通り、まだジーザス・セミナーの性質がわからなかったことと、同じカリフォルニアなので出掛けてしまったにすぎないようだ。

先生は今、このジーザス・セミナーも含めて今までの史的イエス研究の総まとめをしている(あるいは、した)のだろうが、いつ出版されるのか定かではない。日本はもう大晦日であろう。一日遅れではあるが早晩こちらも2009年になってしまう。ああ、今年もさまざまなことを積み残してしまった。あの師あって、この弟子だものなあ。タイセン大先生じゃないが、カリフォルニアでイエス探してるから駄目なのかな、ガリラヤに行かなければ。そうだ、他の先生方を、じいさん、じいさん、と言ったが大宣(寒いが「大宣教」のつもり)先生も65歳過ぎたんじゃないかな。