Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

「霊が鳩のように降る」(マルコ伝 1:10)はヘブライズムとヘレニズムの和え物

Edward P. Dixon 先生が、この表現はヘブライズムかヘレニズムかで、中間の立場をとった。「鳩」のイメージはヘブライズム(旧約聖書)、霊が「鳥」のように降るのはヘレニズム(ホメロス)ということらしい。しかし、霊が(天より)降ることは初代の王サウルの例ににもあるように(サムエル記上 10:10)、ホメロスの神話とかならずしも関連しないと、私は思う。

ディクソン先生の趣旨は、新約聖書ギリシア語がlingua francaであった世界で、ホメロスも聞く者の(読む者の)理解の助けになったであろうということなので、それは頷ける。クレアモントのMacDonald教授の主張するように、何でもかんでもホメロス先にあり、とするのは頓珍漢。

結論の前に、キリスト論とのからみでθειος ανηρについても議論していたが、Ludwig Bieler には流石に触れていない。それにしてもテイオス・アネールとは懐かしのキリスト論。

以上は Journal of Biblical Literature の最新号(128:4, 2009)にある論文だ。Descending Spirit and Descending Gods: A "Greek" Interpretation of the Spirit's "Descent as a Dove" in Mark 1:10(759−780)。