Comments by Dr Marks

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不幸な時代に神学を学んだ人たちと、その弟子たち(ゴールダー先生の世代とベビーブーマー=団塊の世代)

先に書いた記事で(http://d.hatena.ne.jp/DrMarks/20100211/p1)私は、ゴールダーが悪い時代を生きたと書いた。それで思い出すのが、私は下書き(英文)はあるが竹田寿恵雄先生のことについて本家でまだ書いておらず、彼の愛娘まりりん先生に約束をまだ果たしていないということだ。ゴールダーは1927年生まれだが、それより早い1915年生まれの竹田も、私は悪い時代を生きたと思っている。(もちろん反面、非常に人間的な、活発で良い時代でもあったろうことは否定しない。羨ましいほどである。「悪い」というのは研究史上の判断である。)

神学や聖書学の研究史的に見ると、ずいぶんと先入観に囚われ、本質が見えていなかった時代であると考えている。そして、この世代の研究者に日本の聖書学や神学の学徒は指導されたわけであるが、この世代の師である「悪い時代を生きた」人々よりも、肝心の聖書や神学を学ぶ機会が一層少なかったため、碌な力が備わらなかった。とくに日本は顕著で、団塊の世代を筆頭に学ぶ機会を略奪されたのである。

日本各地から神学部や神学科が消えて、この「悪い時代を生きた」先生方が一般の学部で白けた気分で教えていた頃、ひょっとしたらまともな学生は文部省の認可も何もない各種学校にすぎない「神学校」にしかいなかったのではないかと思っている。実際にこの世代で今SBL、AAR等に参加している日本人の先生方(団塊の世代しらけ世代)は無認可の神学校出身で、後に欧米の神学部で学位を得た人も少なくない。

もっとも、この世代の書き残したものには今も課題として看過しえないものも多い。ゴールダーの論文は私の学位論文の後にも出ているから、見直して考えてみようと思っている。竹田先生も然り。