Comments by Dr Marks

出典を「Comments by Dr Marks」と表示する限り自由に引用できます

RBL (Review of Biblical Literature) に載ったおかしな書評:Jan Bremmer, ed."The Strange World of Human Sacrifice" (2007) について

まず、二つ断っておく。一つ、「おかしな」と書名のStrangeは偶然で受けを狙ったものではない。 二つ、書評そのものがおかしい、というのではない。書評そのものはしごくまともだと思う。

RBLの冊子体を個人で購読しているが、ほぼ毎週Eメールで速報版が来る。今頃、いくら人文科学系とはいっても、速報が来るくらいだから昔の書物を書評などしない。原則は出版後1年以内だ。私も一度してもらったが、一年以内に書評が出た。しかし、一年以内というのは、書評依頼が一年以内であって、評者がぐずぐずしていれば遅くてもいいのだろうか。いや、そんなはずはないと思う。

この本は、ご覧のとおり2007年の本であり、2−3年前の本ではないか。何で今頃。しかも、評者が述べているように、本学会に密接な内容は収録してある12論文のうち2本にすぎない。また、宗教の歴史と人間学と銘うっておきながら、歴史的な考察が一切なされていないものもある。更に、欧米についてよりもインドが3編というのも、編集に当たっての考慮の浅さが感じられる。(以上は、評者David Frankfurterも述べていることだが、まったく同感である。)

なお、この中に日本についての論文が1本ある。張本研吾(Kengo Harimoto)というインド学者が書かれたが、彼は1999年に University of Pennsylvania でインド学の学位を取られた方だ。張本博士は正直な人で、彼の論文の初めに「自分はサンスクリットの文献屋なのに、たまたま日本語が読めるからとお鉢が回ってきた」と書いている。そう、彼はまったくの素人であるのに切腹や神風を歴史的考察もなしに、また human sacrifice とは何かの定義もなしに書かされている。

おそらく、張本博士の責任ではなく、human sacrifice とは何かを含めて、編者であるJan M. Bremmer教授のいい加減さに責めはある。(このことも、もっと遠まわしであるが、評者 Frankfurter 博士が述べていることである。)編者はライデン大学周辺で(張本博士も当時ライデン大学)、しかもインド学者だけで4人も調達したにすぎない。

たぶん、こんないい加減な本は売れないし、シリーズとしても無理だったんだろう。泣きついて今頃書評に出したのであろうか。RBLに載る書評はPDFで読める。→http://www.bookreviews.org/pdf/6842_7413.pdf