Comments by Dr Marks

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クルト・シュヴィッタースの「我らは(死んでいく)」という詩。その私的な試訳。


クルト・シュヴィッタース(Kurt Schwitters、1887−1948)のことはウィキペディアでも参照いただくとして(http://bit.ly/hEkDHo)、彼の詩の一つ。1917-1918年頃の作品。元祖変てこ芸術家の一人は親の残してくれた家作の収入で暮らせた果報者。何でも好きなようにやった。

絵画だけではなく、詩も書いたし小説も書いた。そのどれもが変てこだが、変てこに面白い。詩はもちろんドイツ語が大半だが、フランス語でも書いたし、イギリスにいるときは英語でも書いている。余もそんなふうにしてみたいもんだ。絵が変てこなように、書いたものも変てこだが、変てこに面白い。

意味わかんねー的なものが多いのであって、余の訳文が悪いわけでもない。原詩は語呂合わせ。訳文では難しい。例えば「生きている、我らは」を「住んでいる、我らは」とすることもできる。そうすると、「死んでいく、我らは」と語呂が合う。しかし、leben 自体は、生きているでも住んでいるでもいいのだが、「住んでいる、我らは」では意味をそこねる気もしたからこうなった。もっといい訳があったら教えてけれ。

Wir


Leben wir
Streben wir
Sterben wir
Fichtenüberwölbt Welt
Sterbestumm leben
Glockenumstrahlt streben
Sternenüberhöht sterben
Glut läutet Welt


我らは


生きている、我らは
努力している、我らは
死んでいく、我らは
もみの木の丸天井で覆われた、世界で
死の沈黙に、生きている
光で覆われた鐘で、努力している
見おろす星の下で、死んでいく
激情が、鳴り響く、世界で