Comments by Dr Marks

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コメントにならないコメント−10 (我が家が Nick Carraway が住んでいた Weather Beaten Cardboard Bungalow である)

あれ、今気づいたが、West Egg はマンハッタンから ペンシルヴェニア州フィラデルフィアくらいの距離だ。確か今でもNYとPenn の間は車で3時間かかるから、20マイルか。West Egg なんて(行ったことはないが)ちょっと遠いところだなー、変だぞ

また、冗談を。でも、ホント。バンガローとは小規模な平屋建ての建物一般のこと。小規模といったって、たいていは寝室だけで二つか三つはあるし、女中部屋も台所の脇にある場合がある。また、カードボードといっても、まさかボール紙のことじゃない。普通はベニヤ板のような新建材であるが、薄板一般がカードボードだ。

我が家は F. Scott Fizgerald の小説 The Great Gatsby の話と同じ 1920 年代に作られた家である。少し前までは向こう三軒両隣、みな 1920年代のカードボード・バンガローだったのだが、次々に二階建に増築され、四寝室や広い居間や書斎を造るようになってしまった。実は我が家も、外壁はモルタルになったのでカードボードではなくなったが、ユダヤ人の婆さんが一人で住んでいた隣家は二年前までカードボードで、まさに風雪に曝されて(weather beaten)酷いものだった。今は韓国系の方が住んで、二階建に改築された。(それまでは、この隣家が界隈で最も荒廃=rundownしていたのであるが、今は我が家がどうやら一番らしい。)

1920年代の庶民の家はこんなものだった。しかし、通りを幾つか隔てて南にはレンガ造りの家を建てる人たちもいたし、更に南のウィルシャー通りまでの、現在も高級住宅地である日本の総領事公邸のある辺りは、我々の数倍の敷地で総二階のレンガ造りが多くなる。

しかし、二人で借りる予定が一人になってしまったとはいえ、若者のニックが当時80ドルも出して借りるにはやはり贅沢な住家である。エール大出のエリートででもなければ、やはり無理な借家であったろう。因みに、当時の平均的な年収は1,000ドルだった。今日、表通りのアパートで空き家の表示があったので、見るとstudio すなわちワンルーム・アパートで1,295 ドルと書いてあった。学生さんが多いアパートだが、親御さんは大変だと思う。現在、我が家を借りるとすると、安く見積もっても 4,000 ドルだろう。学生さんには無理で、普通のサラリーマンにも大変な額だ。

この項つづく。(次回は「小説が売れるのに法則などないーフィッツジェラルドの場合」)