The Best Is Yet to Be! カーク・ダグラスがかっこいい―チャールトン・ヘストン亡き今
クリスチャンで全米ライフル協会(NRA)に尽力した共和党員ヘストンはアルツハイマーをわずらって今年の4月に84歳で亡くなった。彼は『ベン・ハー』や『十戒』でユダヤ人役をしながらもユダヤ人ではない。政治的立場は別ながらも、ダグラスはヘストンの友人で、10年位前に深夜番組に出たときもヘストンの尻を蹴飛ばしてやるなどと軽口を叩いていた。
そのときは、ダグラスが大病をした後で、ずいぶんと弱々しく見えたが、宅配のニューズウィークの写真はしっかりとしている。なかなか冗談がうまく、10年前のその番組に出たときには、出てくるなり観客にお辞儀をして、「私、マイケル・ダグラスの父でございます」と名乗った。確かに今では、息子のマイケルのほうが有名なのかもしれない。
カーク・ダグラスは、息子のマイケルよりはるかにかっこよかった。そして、今でもかっこいいと思ったのがこの写真だ。彼は、10年前の番組で、大病の後、遠ざかっていたシナゴーグ(そう、彼はユダヤ人)に熱心に通うようになったそうだ。そして、奥さんと一緒になって始めた慈善事業が、子供たちの小さな遊園地(公園)を造ることだ。現在91歳で、このほど400個目の公園を完成した。すごい事業だと思う。
彼の両親は有り金はたいてロシアから三等客室の船賃を工面してアメリカに来た。そして、誰にでもチャンスを与えるアメリカは素晴らしい、と子供たちに教えた。彼は大学にも入れてもらい(学費は自分で稼いだとも言われるが)、映画の世界に飛び込んで、確かにアメリカはそのような国だと思ったが、病気の後は生きる意味についても考えるようになった。
数年前に彼の母が亡くなった。ベッドサイドで母はこう言ったそうだ。「息子よ、心配しなさんな、お呼びは誰にでも来るんだから」。間もなく92歳になるカーク・ダグラスは、チャールトン・ヘストンもそうだが、「誰にでも」来る死が、「自分以外の身の回りの人たちにも」訪れることが多くなったことに気づく。確かに、親しい者が順に亡くなっていくのは気が滅入る。
それが老いて行くことではあるが、子供たちの公園を造りに行くことは、そのような老いを忘れさせてくれたようだ。しばらく前にテレビで見たときも、子供たちと一緒になって滑り台で遊んでいたのには驚いた。「今、わしゃ黄金の晩年の真っ只中じゃよ。今んなって、やっとこさ分かったことはね、捧げたり奉仕したりするすべを知らんうちは、まともな生き方も知らんということだ。」
「それでもね。ローバート・ブラウニングが書いてるが、『最良の時はまだ先だ』(The best is yet to be)ってことさ。」