Comments by Dr Marks

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No. 5.

新約聖書パピルス紙古代写本の記号と番号について

P45 というのはワルサーP45というピストルの名前ではないという寒い冗談はすでに書いた。本当は新約聖書の現存古写本の分類番号である。この場合、P は「記号(siglum)」といい、45をその記号で分類されるものの一連番号という。なお、読み方だが、「ピー・フォーティファイヴ(あるいは日本語でピー・ヨンジュウゴ)」となる。

普通、印刷において、あるいは教室で黒板に書く際は、Pはゴシック体あるいは筆記体で表わすが、45のような数字は上付き文字で書く。つまり、P45のようになる。しかし、普通にP45と書いて悪いということはない。

記号Pの意味は「パピルス紙に書かれた新約聖書の古代写本(古写本)」のことである。製本形式が巻物であっても冊子体であってもパピルス紙に書かれたものはPで表わす。もっとも、パピルスは聖書の写本材料としては最も初期のものであるため、製本形式が判然としない断片のほうが多い。

一連番号の意味は、おおむね発見の順番に基づく。現在、1番から124番まで報告されている。Nestle-Aland *1Novum Testamentum Graece *2 末尾の付録に詳細(番号、作成年代、所蔵箇所、聖書該当部分)が載っているが、最新の番号まではなく、いずれも100番くらいまでのはずだ。最新番号については例えばここを参照のこと。

新約聖書パピルス古写本の発見は意外に最近のことであり、主なものは皆、20世紀に入ってからの発見である。そして、番号は発見(報告あるいは判別)の順番であるから、古写本の古さとは関係がない。今のところ一番古いものはヨハネ伝18章の一部が書かれていたP52であり、西暦125年頃のものである。

P1からP124までの中でも三つの大きなグループがあり、チェスター・ベアティはその大きなグループの一つである。ケニョン卿の発表ではP45P46P47の三つの古写本群であったが、現在では新たにP97P99の二つがチェスター・ベアティに追加されている。内訳については次回。

*1:このように略されているのは、編纂に功績のあったEberhard Nestle(1851−1913)とKurt Aland(1915−1994)の両人のこと。

*2:最も一般的な批判注記(critical apparatus) 付きのギリシア語本文(text)であり、普通、Nestle-Aland からNAと略される。最新版は27版なのでNA27と称される。なお、聖書協会世界連盟(United Bible Societies)のGreek New Testamentの本文はNAと同じである。NA27に対応する版は第4版であり、UBS4と略称される。