Comments by Dr Marks

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仏国猿居士大統領のサル知恵とカダフィ大佐の優勢ならびにプロ意識


余の住む米国西海岸より半日早い中東や欧州では新しい動きがあった。アラブ連盟(Arab League)とはかなり違う性格でマイナーなのだが湾岸協力会議GCC=Gulf Cooperation Council)というのがあって、カダフィ政権はリビア政府としての正統性を失ったとアナウンスした。同時に、リビア反乱軍(自称、リビア暫定政府)からの二人の使節と会談した猿居士フランス大統領が、主要国としては初めて暫定政府を公式にリビア政府と認めると公表した。

サル知恵だな。早速、アル・アラビア・ニューズ(Al Arabiya News)の英語版なんか「えっ、致命的な秘密(grave secret)への墓穴を掘ったんじゃないの」と書いてたよ。ほら、例の大統領選での多額の不正献金問題だよ。まあ、それがこのこととどう関係するのかは置いておいて、やっぱりサル知恵なんだなあ。一日前の水曜日までなら、リビアは一進一退の内戦状態と報じられていたし、西側メディアは反乱軍を過大評価していた。

ところが、米国の軍事担当者はさすがで、迂闊な介入を一貫して支持していなかった。そして木曜日、西側を含めたメディアは一斉に、カダフィ軍が優勢となり、ベンガジを除く各地でいったん反乱軍が掌握した石油関連施設や周辺の町を奪還したと報じた。メディアの中には反乱軍を蹴散らした(scattered)と表現したものもあった。実際に、多くのメディア関係者がほうほうの体で逃げる反乱軍を目撃したりインタヴューしている。

実は、いくつかの報道によれば、水曜日までのカダフィ政権側の攻撃は、せいぜい反乱軍の更なる進軍を阻止する程度で、次男のサイフ博士が反乱軍と交渉を続けていたためであると書いている。交渉の進展がないので聖なる金曜日の前の木曜日に本格的な攻勢をかけたようだ。いくつかのメディアの中で、現在はアルジャジーラ英語版記者である英国人ジャーナリストのトニー・バートリー(Tony Birtley)氏の見聞を主に紹介しよう。顔写真は彼。

バートリーは名門ロンドン・スクール・オヴ・ジャーナリズム(LSJ)で学び、BBC、CNN、ABCなどを経て現在アルジャジーラ英語版の記者だが、30年の記者生活中20年はほとんど世界の紛争地で取材してきたことで有名だ。取材のスタイルは映像重視・単独取材(要するに兼カメラマン)。なお、彼は安全のため社への送信に際しては匿名で行っている。その彼は木曜日の激戦地であるラスラヌフ(Ras Lanuf)にいた。

まず、彼自身、圧倒的な実力があるはずのカダフィ軍の攻撃が穏やかなのに疑問を持っていたらしい。しかし、サイフ博士の最終判断で本格的な攻勢が始まった。彼は完全に優位なカダフィ軍が反乱軍を難なく追い払うのを直接目撃することになる(映像化もしたであろう)。まず、カダフィ軍は空爆だけではなく、海からも銃撃を加えたらしい。そのバートリー記者の判断では、それでもカダフィ軍が全力を挙げて総攻撃をしたようには思えなかったそうである(つまり、まだ手心を加えているし、雲散霧消する反乱軍への追い討ちはなかった)。

AFP(フランス通信社)の記者は「ともかく命からがら逃げるしかなかった」という反乱軍へのインタヴューも紹介していた。別の町アジャビヤ(Ajdabiya)にいた記者(Jacky Rowland)は空と海からだけではなく南の砂漠からもカダフィ軍が攻めてきたらしい。これ以前のサイフ博士の反乱軍との交渉が本当とすると、カダフィのプロ意識(professionalism)に驚いたとの報道もある。

カダフィ政府側と反乱軍側双方の言い分が違っていてどちらが本当かわからなかったが、今回はベンガジにいる女性記者(Hoda Abdel-Hamid)やタイム誌の同じく女性記者(Deborah Haynes)が、反乱軍首脳でさえ敗退を認めていると報道した。そういえば、今朝のネット版タイム誌は先の報道内容を斜線を引いて訂正していたな。なんか余のブログみたいでおもしろかった。

まあ、結論だが、猿居士はサル知恵で早急に反乱軍を認めてしまったが、当然ながらカダフィは「猿よ覚えていろよ」ということで・・・怖っ、猿はこれからどうなるんだろう。その後、猿居士はキャメロンに「一緒にやろうよ」と言ったらしいが、「はい、そうですか」とは誰も迂闊には言うわけないよな。猿居士孤立というところか。あっ、そうそう、英文Twitter仲間が、猿のやばい「フレンチ・キス」って言っていたような気がする・・・。