Comments by Dr Marks

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ハヌカ・ゲルト(ユダヤのお年玉)をもらった


普通は子供がもらうものだが、まず、もういい加減大人の細君が10ドルもらったと喜んで帰ってきた。子供でなくても、大人と子供くらいの歳の差があれば、つまり老人なら大人にも上げるのである。その後、20ドル、50ドルと結構もらう。気をよくして今日はハヌカ・ゲルトの形のチョコレート(ハヌカ・コイン・チョコレート)を買っちゃった。

ハヌカは英語的にはハナカとも言うが、もともとヘブル文字で書かなければならないから Chanukah, Hanukkah その他いろいろなローマ字綴りがある。ハヌカの祭は、ちょうどクリスマスの頃なので(毎年、太陰暦に基づくので日にちは移動する、今年は12月20日の日没から28日まで)お正月のような祝日と勘違いする人もいる。違う。そもそもユダヤの正月は秋のローシュ・ハシャーナであり、ユダヤ人のカレンダーは秋から始まるのだ。

ハヌカは紀元前2世紀にユダヤへの強攻策に転じたセレウコス朝に対する反乱(マカビの反乱、旧約聖書続編「マカバイ記」参照)で勝利したことを記念する行事で、小祭の一つだ。小祭だから断食をしたり労働禁止をしたりすることはない。ただ、八日間祝うだけである。普段は七枝の燭台(メノラー)が九枝になる。中央の一本(シャマーシュという)がまず灯されるが、他のロウソクは八日間一本ずつ増やされて最終日に全部灯る。

ゲルトというのはイーディッシュ語だからローマ字では gelt と書くが、もともとはドイツ語の Geld(発音はイーディッシュ語と同じゲルト)から来ている。だからハヌカ・ゲルトとはハヌカのお祭のお金。普通は子供がお祝いにもらう小銭のことだ。子供たちは小遣いをもらい、ドライデルという独楽を回して遊ぶ。だから、何かお正月のような感じも確かにする。

この小遣いは、子供たちがもらったうちから一部を普段お世話になっているユダヤ人学校の先生にプレゼントを買うのにも使われたらしい。また、同じハヌカ・ゲルトの名称で、ラビたちが自分の教区の中で貧しい人のために配ったお金を指すこともある。もちろん、ラビたちが金持ちなのではなく、金持ちがラビに託して用立ててもらうのである。

ハヌカ・ゲルトなどというのは聖書に基づくのでもラビ文書に基づくのでもない。イーディッシュ語であることからわかるようにアシュケナージユダヤ人の習慣であり、せいぜい17世紀から始まったにすぎないという研究もある。まあ、何だな、ユダヤ人正統派の習慣・風俗の多くは、そんなに古いものではないのだよ。

ハヌカ・ゲルトのチョコレートなどはニューヨーク生まれで、せいぜい20世紀初頭のものらしい。まあ、それにしても、クリスマス・プレゼントをするキリスト教徒はお金ではなく、なるべく品物を上げるが、ユダヤ人と日本人は現金だね。こっちのほうが合理的だ。お金大好き。ねー、ちょうだい。