Comments by Dr Marks

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No. 9.

コメントにならないコメント−25 (ヴァメーシュの『イエスの復活』「イエス時代の来世に対するユダヤ人の心構え」中編)

けっ、「請う、ご期待」なんて言う奴に限って期待なんかできやしない死海文書がそれほど来世観や復活概念の理解の役に立つものかね。しかもエッセネ派という特殊なグループの考えまでわかるなんて眉唾だね。確かに、死海写本の元の所有者つまり隠した人たちはエッセネ派だとも言われたが、決定的な証拠があるわけじゃない。

そんなことを考えながら、ビヴァリーヒルズのあるリハビリテーションセンターのパティオでノートを広げてヴァメーシュを広げた。このパティオは病院の中だが唯一の喫煙場所なのでひっきりなしにタバコのみが休みに来る。さすがに医者や看護婦は少ないが、その他の働き人は結構吸うらしい。吸ってもパティオはパラソルの上は空に開けていて、涼しい風の入るところだから、すぐにきれいな空気になる。嗚呼、猫猫先生、LAにだってこんなに喫煙者に優しい病院だってあるんですよ〜

すると、知人の娘でカナダはモントリオールで文学を教授しているはずの人が入ってきた。何と、その知人が骨折して入院しているそうだ。彼女は、私の本に目を留めると、二つのアクセント記号を正しくとらえて、ゲーザ・ヴェアラメーシュと読み上げる。知っていますかと聞いたら、知らないがユダヤ人でしょう、という。彼女はフランス系ユダヤ人。しかも、ユダヤ人なのにカトリック教徒なのはヴァメーシュと同じ

そのことを説明してあげたら、いきなりイエズス会士の神学者は面白いという話をしだした。誰がみてもイエズス会士は面白いんだな。タバコや酒が好きだし、中には女が好きなのもいる。いや、みんな女が好きだな。心得違いしないように言っておくが、どこぞの助平坊主のように、身持ちが悪いとか不品行だということではない。その辺りはきちんとした上で、女性と話したりするのが好きなのだ。そりゃ、家族がいるわけじゃないからいいじゃないか。彼女は今夕の飛行機に乗って明日の朝はモリエールモントリオール)なんちゃって。

そうそう、本論に入らなければならないが、ヴァメーシュはやはり、我々の期待を裏切るのだよ。ヴァメーシュといえば、死海文書発見の当初から解読の仕事に携わり、1947年の発見から間もない1949年に最初の論文を書き、1953年にはフランス語で死海文書について書いて博士号を取得した。また、英語版の翻訳編集の第一人者でもある。誰が見たって、死海文書のエクスパート〜〜〜な〜の〜だ〜あ〜。嗚呼、それなのに、それなのに♪〜、死海文書なんか役に立たん、と言うんだよ。私が予言したとおりだ。

ナグハマディ文書が出ればナグハマディ、死海文書が出れば死海文書。なるほど、たいした発見だよ。いろんなことが、お陰で明るみに出た。だけどね、何でもこれを見りゃわかるということじゃない。今我々が問題にしている死後の世界観や復活の概念に至ると、がっかりするほど(disappointing)ほとんど何もないんだって。死海文書の隅から隅まで知ってる大将が言うんだから間違いない。だいたいね、死海文書なんかは、ほとんど意味をなさない切れっ端だらけなのだよ。

もちろん、少しはある。例えば1QSというクムラン第一洞窟から出た文書には、「終わりなき命における永遠の喜び、終わりなき光における栄光の冠と権勢の衣装」(1QS 4:7-8)とあるが、実際の肉体の復活というよりは寓意的な表現である可能性も高い。また、いわゆるメシアニック・アポカリプスと言われる第四洞窟から出た文書の断片には「傷ついた者をいやし、死者を生き返らせ、貧しき者には福音を運ぶ」(4Q521、断片 2 II、12行目)とあるが、何じゃこりゃ、イザヤ書61章と一緒やないか

これじゃ、どうにもならんと思っていたところ、来客やら長電話やらで邪魔が入った、続きは、明日。