Comments by Dr Marks

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二つの「エリエリ(Eli Eli)」、YouTube でごまかすブログ(「詩篇」第22篇からと女性落下傘部隊員の詩「カエザリアへの歩み」)

「エリ」とはヘブル語で「我が神」の意味。従って、エリエリは我が神我が神という繰り返しになる。ユダヤ教徒のみならずキリスト教徒にとっても非常に重要な旧約聖書の神への祈り、いや神への叫びである。二回繰り返すところに切実さが自ずと現れているのであろう。

詩篇 22:1 の歌詞は、ヘブル語では「エリ、エリ、ラマ、アザヴタニ」(我が神、我が神、何んぞ我を捨てたまふや)である。この歌は、極限の絶望状態にあっても最後は神に信頼を置く祈りであるため、イエスは十字架上の最期に当たってこの歌を吟じたとされる。マタイはギリシア文字で、この原語に近く書き写したが(マタイ伝27:46)、マルコはイエスの日常語であるアラム語での音で「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ」とギリシア文字に移した(マルコ伝 15:34)。

さて、初めのエリエリだが、ここでは珍しくイーディッシュで歌っている。弱ア音が弱オ音に変わるイーディッシュの特徴で、「エリ、エリ、ロモ、アザフトニ」となっていることに気づかれるだろう。本当は聖書からのエリエリならモルデカイ・ベン・ダヴィッド(Mordechai Ben David)の歌う曲がいいのだが、ヨウツベ(日本語で YouTube のことらしいが)では探せなかった。私は彼の曲でなら歌えるので、ときどき公衆の面前で(恥ずかしくもなく)歌う。

もう一つのエリエリは、アウシュヴィッツ帰りの私の友人ミスター・ハーシュコヴィッツと同じハンガリアン・ジューとして生まれながらも、後に家族と離れ単身イスラエルに渡り、イギリス軍にエジプトのカイロで落下傘部隊の訓練を受けたイスラエルの女性兵士ハンナ・セネス(ハンガリー名:セネス・アニコ、その他アン・セネシュと名乗ったり種々、詳しくはウィキべディア参照http://en.wikipedia.org/wiki/Hannah_Szenes)の詩。彼女はナチ占領下のハンガリーおよびハンガリーの同胞を救おうとハンガリーに潜入するがハンガリー国家に対する反逆罪で銃殺される。

聖書にある記事は上に示した旧約聖書一箇所、新約聖書二箇所を読んでいただくとして(聖書を読ませる高等技術?)、ハンナ・セネスの詩「カイザリアへの歩み」を紹介しておこう。カイザリアとは、英語ではスィザリア、ヘブル語ではケサリア。地中海に面したイスラエル北部の古代の港町。現在は静かな海辺の田舎。しかし遺跡を訪ねて観光客がときたま来る。地元の人にとっては行楽の地。

エリ、エリ/シェロー、イガメール、レオラーム/ハホール、ヴェハイヤーム/リシュルーシュ、シェル、ハマイム/ベラック、ハシャマイム/テフィラットゥ、ハアダム


わが神、わが神/どうかこのようなものが途絶えませんように/砂と海/潮騒と空の輝き/人間の祈り
(Dr.Marks 訳)

最後に Dr. Marks がかつて写した、この詩のとおりのカイザリアの海。きれいでしょ。