Comments by Dr Marks

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No. 9.

ツァデク(ז)、クフ(ק)、レイシュ(ר)、シン(ש)、スィン(שׂ)、ソフ(ת)、さあ今日はここまでやってみよう

えっ、今日はここまで、っていうけど、アレフベイズはソフ(ヘブル語でタフ)で終わりじゃないの。うん、どうせアレフベイズがそのまま音価を表わしているわけではないからここで終わりにしてもいい。しかし、翻音(翻字とも違うことは前に書いた)すなわち単語という文字列を読むこと(発音すること)はアレフベイズだけでは無理なのでいくつかの合成文字について、回を改めて学ぶことにする。

どういうことかというと例えば Mark をイーディッシュの綴りで書けば「מארק」でよいことは今日までの学びでわかる。綴りは右から左になることに注意。また、大文字小文字の区別はない。だから kram となっている。因みに、ヘブル語なら krm「מרק」という綴りも可能だ。しかし、イーディッシュでWaterman と書くのは今日までの学びでは無理なのだ。答は「וואטערמאן」なのだが、その説明は後日。

まず、いつものようにYIVOのサイトを開いてください(http://www.yivoinstitute.org/yiddish/alefbeys_fr.htm)。ツァデクの単語例はツクンフトゥ(tsukunft)の ts の音。意味は未来(英語の future)。字体が二つあって長いのが語末用。クフは例がキンダー(キンデレ、kinder)で音は k。意味は子供たち(英語のchildren)。なお、単数の子供はキンドゥ(kind、ただしドイツ語のようにキントゥと発音してはならない。トゥではなく濁ってドゥ。)

レイシュの例はロイトゥ(royt)の r の音。意味は赤色(英語の red)。シンの字体はポイントのないもの。またはポイントが右上にあるもの。ポイントが左上は別の字でスィン。これらの違いに注意すること。シンの例はシヴェスター(シヴェステル、shvester)の sh の音。意味は姉妹(英語の sister)。スィンの例はソイネ(soyne)で音は s。意味は敵(英語の enemy)。なお、ソイネはヘブル語起源なので複数形はソニム(sonim)。

さて、最後のソフだが、例は真ん中にポイント(dagesh)があるトフだけである。トという強い音になるとポイントがあり、主にヘブル語起源の言葉に使われる。この例でもトイレ(toyre)の t の音だ。意味はトイレという何かを連想するのとはまったく違う律法(あるいは律法の書、旧約聖書)Torah のことだ。さてポイントのない場合はソフと呼ぶ。音価は s であり、語末の s 音によく使われる。イーディッシュとしてはトフの形ではなくソフの形で使われるほうが多い。

以上で基本のアレフベイズはめでたく終わった。自分のローマ字化した名前をイーディッシュ綴りで書いてみるのもいい。例えば花子(Hanako)は「האנאקא」と書ける。ここでアレフはパセフとコメツを区別していないが、区別するなら「האַנאַקאָ」となる。しかし、先にに述べたように、書けない名前も出てくるだろう。その例外は次回の講座の課題とする。